コーチング 中国全省の旅 心理学

Kolbの体験学習モデルとは?中国全省の旅(香港編)を例に学びを深める

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体験学習モデル

深圳拠点から毎週足を運んだ香港――境界線の向こうに広がる制度と歴史の狭間で感じた五感体験は、私にとって貴重な体験学習の機会となりました。本記事では、デイヴィッド・コルブの「体験学習モデル(Experiential Learning Model)」の4段階を、「中国全省を旅して Vol.4|境界線を歩く:制度と歴史の狭間で見た香港」の連載を題材に具体的に解説します。実際の旅を振り返りながら、「経験→振り返り→概念化→実践」のサイクルをまわすコツを探りましょう。


1. Kolbの体験学習モデルとは?

デイヴィッド・コルブ(David A. Kolb)は、学習を「経験 → 振り返り → 理論化 → 実践」の4段階で構成される循環プロセスと定義しました。教育現場や企業研修だけでなく、自己探究やコーチングの現場でも活用される強力なフレームワークです。

  1. 具体的経験(Concrete Experience):五感を通じて得るリアルな体験
  2. 内省的観察(Reflective Observation):体験後に振り返り、気づきを抽出
  3. 抽象的概念化(Abstract Conceptualization):理論や概念を用いて意味づけ
  4. 能動的実験(Active Experimentation):学びを次の行動に移し、結果を検証

このサイクルを意識的に回すことで、表面的な情報収集にとどまらず、深い学びと自己変容を促進します。


2. 4つの学習サイクル概要

サイクル概要主なポイント
Concrete Experience実際に体験する五感で感じる・慣れた枠を越える
Reflective Observation振り返る感情・思考の記録・気づきの整理
Abstract Conceptualization理論化する関連理論の適用・概念化
Active Experimentation実践する小さな実験・行動計画・フィードバック

次章では、Vol.4の香港旅ブログを題材に、このサイクルを順に追います。


3. 香港旅ブログを題材にした体験学習の実践

3.1 Concrete Experience:制度の「境界線」を五感で体感

私は「深圳から毎週香港へ通った」体験をこう表現しました。

「川一本を挟んで入境ゲートを越えるたびに、空気感、人々話す言語、掲示板のポスター、ネット環境までがガラリと変わるのを五感で感じた」


■ 五感+補助感覚による香港体験の記述

視覚(Sight):
深圳と香港の間で変化する都市景観、制服の色、駅構内のデザイン、広告や標識の字体の違いなど、視覚情報から制度の「見える違い」を体感。

嗅覚・味覚(Smell & Taste):
屋台から漂う香辛料の香りや、叉焼包などのローカルフードの甘辛い味が、香港の文化をダイレクトに伝える。

聴覚(Hearing):
駅のアナウンス、街中の会話、テレビの音声──広東語・英語・北京語が入り混じる音環境が制度的・文化的アイデンティティを映し出す。

触覚(Touch):
香港ドル紙幣のしっとりした感触、改札やエスカレーターの金属の冷たさ、MTRの質感など、肌で感じる都市の物理的違い。

動態感覚・空間感覚(Kinesthetic & Spatial Awareness):
バスやMTRでの移動中、車窓から流れる景色(湿地→高層ビル)や身体の揺れを通じて、自分が「別の制度空間」へ移行していることを身体全体で実感。

内受容感覚(Interoception):
入境ゲートを通過する際の緊張、文化の違いへの違和感や好奇心──こうした内面的な感情変化が身体の内部感覚として湧き上がる。


このように整理することで、体験学習モデルの「Concrete Experience(具体的経験)」が五感と身体感覚のレイヤーで構成されていることが明確になります。これらのリアルな体験が、学びの土台(Concrete Experience)となります。

3.2 Reflective Observation:入境と文化の差異を言語化する

旅の中で私が瞬時に感じ取った「制度の違い」をブログで詳細に振り返りました。

  • 入境という概念の不思議さ:同一民族の移動にパスポートとビザが必要な矛盾
  • 一国二制度の実感:通貨、法制度、ネット規制、政治体制の差異を具体的に並べた
  • 歴史的背景の影響:逃亡犯条例デモや国家安全法導入前後の街の空気の変化への気づき

これらをノートやブログに記録し、感情(驚き、疑問、共感)を言語化したのがReflective Observationです。

3.3 Abstract Conceptualization:理論で「制度と歴史」を紐解く

振り返りから抽出した気づきを、以下のような理論と結び付けて概念化します。

  • 認知的フレーミング:人はフレームによって事象を解釈する(GoffmanのFrame Analysis)
  • 制度理論:一国二制度は制度的フレームの切り替えを迫る(Northの制度経済学)
  • 社会的アイデンティティ理論:同一民族でも制度によってアイデンティティや行動規範が分裂する

例えば、川を越えることで発生する「アイデンティティのズレ」が、制度理論のフレーム切替に該当すると整理できます。

3.4 Active Experimentation:認知心理学を用いた応用デザイン

コーチングにおけるActive Experimentation(能動的実験)を、認知心理学の理論を踏まえて具体化します。

  • メタ認知トレーニング:自分の思考プロセスを客観視するメタ認知能力を強化するため、クライアントに「思考ログ」をつけてもらいます。思考のクセやバイアスを可視化し、認知再構成(Cognitive Restructuring)につなげる。
  • スキーマ・アップデート:境界線を越える際に生じた「アイデンティティのズレ」の体験を、新しいスキーマ(認知枠組み)として定着させる演習を取り入れます。具体的には、旧来スキーマと新スキーマを比較させ、差異を言語化して統合するワークを行う。
  • 認知的再評価(Cognitive Reappraisal):一国二制度に伴う矛盾やストレス感覚を、ポジティブな学びの機会と捉え直すリフレーミング技法を実践。クライアントがネガティブな感情を新たな学習動機として活用できるようガイドします。
  • ワーキングメモリ負荷の最適化:情報過多になりがちな旅の体験を要素分解し、小さなバッチ学習(Chunking)を繰り返すことで、ワーキングメモリの負荷を抑制し、効率的な知識定着を図るプランを設計します。
  • デフォルト効果の活用:新たな行動計画を「デフォルト設定」として提示し、クライアントが意識的に意志決定を行わなくても実践しやすい環境を整えることで、実験フェーズへの移行をスムーズにします。

これらの認知心理学的手法を組み合わせることで、学びの実験フェーズがより定着し、自己変容の成果を高めることができます。


4. コーチングで体験学習モデルを活かす(認知心理学的アプローチ)

  1. 認知フレーミングの再設計
    • クライアントの視点を切り替えるフレーミング技法を用い、同一体験でも異なる意味づけを可能にする。具体的には、ポジティブフレーム/成長フレームを与える質問を設定。
  2. 認知バイアスの可視化と是正
    • アンカリング、確証バイアス、正常性バイアスなどの認知バイアスを事前に説明し、旅の体験をもとにバイアスがどのように働いたかをディスカッション。
  3. メタ認知フィードバック
    • セッション中にクライアントの自己観察を促し、思考のプロセスそのものにフィードバックを行う。このメタ認知的対話が、自己調整学習(Self-Regulated Learning)を強化。
  4. ワーキングメモリ最適化ワーク
    • 情報をチャンク化し、プライオリティ付けを行うことで、複雑な体験を整理。認知負荷を軽減し、学びの持続力を高める。
  5. 意思決定ナッジの活用
    • 行動計画をナッジ(行動設計:自然と行動を促す工夫)として提示し、選択肢の配置やデフォルト設定を工夫することで、意志力に頼らず行動を促進。

これらの認知心理学的アプローチをセッションに組み込むことで、体験学習モデルがもつ「循環的学び」の効果を、クライアントの認知プロセスに深く定着させることが可能になります。


5. まとめ:旅を学びに変える循環プロセス

最後に、本記事で紹介した4つのステップと認知心理学的アプローチを統合し、旅を学びに変えるサイクルを振り返ります。

  1. 体験(Concrete Experience):五感を通じて香港の制度と文化の境界線をリアルに味わう
  2. 振り返り(Reflective Observation):入境時の驚きや文化差を思考ログに記録し、認知バイアスの発動を可視化
  3. 理論化(Abstract Conceptualization):フレーミング理論や社会的アイデンティティ理論、メタ認知やスキーマ更新のプロセスで意味づけ
  4. 実践(Active Experimentation):ワーキングメモリ最適化やナッジ構造を活用した行動計画をデフォルト設定し、次の旅やコーチングの実践に移行

コーチングで体験学習モデルを活かす(認知心理学的アプローチ)

  • フィールドワーク型セッション:制度や文化のフレーム切替を観察する課題として、現地観察やVR体験を提案
  • リフレクションタイムの設計:ジャーナリングやペアシェアで思考ログを共有し、認知バイアスやスキーマ変化をディスカッション
  • 理論適用のタイミング:振り返り後にメタ認知トレーニングやリフレーミングを紹介し、クライアント自身で概念化してもらう
  • 実験伴走とナッジ(自然と行動を促す工夫):行動計画をナッジとしてセッション外にもデフォルト設定し、プッシュ通知やリマインダーでフォローアップ

体験学習モデルを循環させることで、旅は単なる観光から深い自己学習の場へと変容します。 みなさん自身の旅や日常の体験を、ぜひこのサイクルに当てはめ、認知心理学的手法を活用してさらなる成長を実感してみてください。


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