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1. なぜコーチングに「身体感覚」が重要なのか?
多くのクライアントは、頭で考えることには長けていても、「自分の身体が何を感じているか」には無自覚です。しかし、心から納得できる選択や深い気づきは、言語よりも先に身体が“腑に落ちる”ことから生まれることがあります。
心理療法の分野では、ゲシュタルト療法やフォーカシングといった手法が、身体感覚への気づきを通して内的変容を促すものとして知られています。
では、これらの考え方や技法を、コーチングにどう応用できるのでしょうか?
2. ゲシュタルト療法とフォーカシングの共通点と違い
共通点:身体感覚と「今ここ」の重視
観点 | ゲシュタルト療法 | フォーカシング |
---|---|---|
基本姿勢 | 「いま・ここ」の気づき | 身体の中の「意味を持つ感覚」(フェルトセンス)に寄り添う |
身体との関係 | 感情や未完の課題が身体に現れることを重視 | 身体に生じる曖昧な感覚から意味を引き出す |
セラピーの目的 | 自己の統合、未完の課題の完了 | フェルトセンスとの対話による自己変容と気づき |
セラピストの役割 | 対話を通して「気づき」を促す | クライアントの内的プロセスを邪魔せず「支える」 |
相違点:アプローチの仕方と枠組みの違い
観点 | ゲシュタルト療法 | フォーカシング |
---|---|---|
理論背景 | ゲシュタルト心理学、実存主義、現象学 | ロジャーズ派来談者中心療法から発展 |
技法の特徴 | エンプティチェア、ロールプレイ、夢のワークなど多様 | 身体感覚を丁寧に感じ、言葉にしていく内省的プロセス |
体験の扱い方 | 感情や行動を「その場で演じる」ことに重点 | 感覚に寄り添い、内的な「気づきの変化」を静かに待つ |
ダイナミクス | 対話的で表現重視、ドラマチックになることもある | 非指示的で静か、繊細なプロセスを尊重 |
共通する哲学的な土台
- 現象学:今ここで起きていることを評価や解釈なしに観察する
- プロセス指向:解決ではなく、気づきとプロセスの尊重
- 身体知の尊重:言葉にならない“感じ”の知性を信頼する
補足:相互補完も可能
実際の臨床やコーチングでは、
- ゲシュタルト的アプローチで感情を「演じ」て動かしたあとに、
- フォーカシングで「その余韻が身体にどう残っているか」を観察する
という併用も効果的です。
3. コーチングにおける活用法と対応フレーズ
ゲシュタルト療法を活かしたコーチング
技法 | コーチングでの応用例 |
---|---|
「いま・ここ」への気づき | 「今、この話をしながら、どんな感覚がありますか?」「そのことを話すと、体のどこに何か感じますか?」 |
エンプティチェア(空椅子) | 「相手に直接言うとしたら、どんな言葉になりますか?」「ご自身の“未来の自分”に向けて、そのまま話しかけてみてください」 |
感情の表出と統合 | 「その怒りに、ちょっとだけ声を与えてみてもいいですか?」「その“もどかしさ”は、あなたに何を伝えようとしているんでしょうか?」 |
▶ 目的:未完了の感情や行動パターンに「気づき」をもたらし、統合へ導く。
フォーカシングを活かしたコーチング
技法 | コーチングでの応用例 |
---|---|
フェルトセンスとの対話 | 「そのテーマについて、身体の中にどんな感じが残っていますか?」「そこに“名前をつける”としたら、どんな感じですか?」 |
ゆっくり待つ | 「その感覚に少しだけスペースを与えてみましょうか」(沈黙を恐れず、内側の変化を待つ) |
シフトを観察する | 「さっきまでの違和感に、何か変化はありましたか?」「それが少し動いたとしたら、次にどんな選択が見えてきますか?」 |
▶ 目的:漠然とした感覚(曖昧さ)を丁寧に扱い、内側からの本質的な気づきを引き出す。
コーチのあり方
- 評価せず、ただ寄り添う姿勢
- 「問いかける」のではなく「感じさせる」
- 安心・安全な場づくり
4. 実践的フレーズ集
身体感覚に注意を向ける
- 「その話をしながら、身体のどこかに感じるものはありますか?」
- 「今、この瞬間、体の中でどこか反応している部分はありますか?」
- 「たとえばその感じに“形”や“重さ”があるとしたら、どんな感じでしょう?」
感情や未完了の感覚を扱う
- 「その“もやもや”を少しだけ声にしてみると、どんな音になりますか?」
- 「その感覚に“名前”をつけるとしたら、どんな言葉が浮かびますか?」
- 「その感覚に少しだけ“いてもいい場所”を与えてみましょうか」
感覚の変化を観察する
- 「少し前と比べて、今その感覚に何か変化はありますか?」
- 「その場所に少し呼吸を送ると、どんな変化がありますか?」
- 「そこにもう少し近づいてみると、何か語りかけてくるものはありますか?」
関係性への働きかけ(ゲシュタルト)
- 「その人がここにいたとしたら、何と伝えたいですか?」
- 「今、その相手にどんな気持ちがありますか?」
- 「あなた自身の“中にいるもう一人の自分”が何と言っていそうですか?」
沈黙とスペースを支援する
- 「ここで少し、言葉ではなく感覚と一緒にいてみましょう」
- 「急がなくて大丈夫です。ゆっくり待ちましょう」
- 「言葉になるまで、その感じと静かに一緒にいてください」
フレーズ使用時の注意点
- クライアントの安全感を最優先に。
- 「わからない」と言われても、それを尊重。
- 明確な答えを求めず、「曖昧さ」と共にいる姿勢を大切に。
5. どんなクライアントに有効か?
タイプ | 有効な理由 |
---|---|
感情を言葉にするのが苦手な人 | 身体感覚に意識を向けることで、内的気づきが促される |
違和感があるが理由が分からない人 | 言葉では説明できない領域にアクセスできる |
複雑な問題に直面している人 | 感覚との対話から、本質的な洞察を得られる |
頭では理解しているが動けない人 | 身体が納得することで行動につながる |
トラウマ的体験を持つが、病的症状が軽度で、精神疾患診断がない人 | 「今ここ」に焦点を当てることで、安全に扱える |
まとめ
ゲシュタルト療法やフォーカシングに共通するのは、「いま・ここ」にある身体の声に耳を傾けることです。
それをコーチングに取り入れることで、クライアントは「頭で考えた答え」ではなく、「内側から浮かび上がってくる本質的な答え」に出会えるようになります。
コーチとして、ただ問いを重ねるのではなく、「感じることを支援する存在」であること。
それが、深い変容を導く鍵となるのです。
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