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1. はじめに:迷い続けることは「未熟」なのか?
「このままでいいのだろうか?」
40代で転職を考え、50代で離婚を決意し、60代でようやく「自分らしい生き方」を探し始める——。こうした現代の大人たちの姿は、以前なら「不安定」「未熟」と見なされたかもしれません。
しかし今や、その「迷い」こそが、成熟への通過点なのではないでしょうか。
本記事では、心理学者エリク・エリクソンの「モラトリアム」という概念を起点に、「大人のモラトリアム」としてのコーチングの意義を探ります。価値観の明確化や自己理解のプロセスが、なぜ今の時代に求められているのか。その背景と可能性を、理論と実践の両面から考察します。
2. モラトリアムとは何か?──心理学の視点から
2-1. エリクソンの発達理論と「猶予期間」
エリクソンは人間の発達を一生涯にわたる8つの段階で捉え、それぞれの時期に「心理社会的課題(psychosocial crisis)」があると述べました。青年期(12〜20歳頃)の課題は「アイデンティティ vs 同一性拡散」。つまり、「自分は何者なのか?」という問いに向き合う時期です。
このとき、エリクソンは“モラトリアム(moratorium)”という概念を導入します。
それは、社会的責任から一時的に猶予され、自由に自己探索をする時期を意味します。
たとえば、大学進学や留学、就職前のギャップイヤーなどが代表的です。
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2-2. モラトリアム人間と現代の大人たち
この概念を日本に導入した精神科医・小此木啓吾氏は、「モラトリアム人間」という用語を通じて、アイデンティティの確立を回避し、成長を拒む若者たちの姿を描きました。
しかし、今日の社会において「モラトリアム」はもはや青年期に限られた現象ではありません。
むしろ社会の急激な変化によって、大人になってもなお「自分は何者か?」と問い直さざるを得ない状況が増えています。
3. コーチングは大人のモラトリアムである
3-1. 大人こそ「立ち止まる力」が必要な時代
就職した会社で定年まで勤め上げるという人生設計が崩れ、ライフキャリアが複線化・流動化する現代。
私たちは20代で一度決めた価値観や目標では、人生の後半を乗り切れない時代に生きています。
こうした中、コーチングは「立ち止まって、自分自身と向き合う時間」を提供します。
それは単なる問題解決ではなく、「私は何を大切にしたいのか?」「どう生きていきたいのか?」という根源的な問いに向き合うためのモラトリアム的時間なのです。
3-2. コーチングにおける価値観の明確化とは?
多くのコーチングセッションでは、「あなたにとって何が大切ですか?」という価値観探求のプロセスが重視されます。
これは単なる自己啓発ではなく、アイデンティティの再構築を意味します。
なぜなら、価値観は「判断」や「行動選択」の基盤であり、それを言語化・自覚化することによって、人はより主体的に人生を選び直せるようになるからです。
4. なぜ今、大人が価値観を問い直すのか?
4-1. キャリアと人生の複線化
現代のキャリアは線形ではありません。転職、副業、起業、リスキリング…。
もはや「一度決めた道をひたすら進む」時代ではなくなりました。
これにより、30代、40代、50代で「やっぱり自分のやりたいことはこれじゃなかった」と感じる人が急増しています。
この「違和感」こそが、モラトリアムへの入り口なのです。
4-2. 人生100年時代と「第2の思春期」
リンダ・グラットンの提唱する「人生100年時代」では、定年はゴールではなく通過点。
60代、70代で新しい人生の挑戦をする人が増える中、「自分は何をして生きたいのか?」という問いは再燃します。
これは一種の「第2の思春期」とも言える現象であり、まさに成熟したモラトリアムと呼べるのです。
5. モラトリアムがない人生のリスク
5-1. 走り続けた先にある「空虚さ」
何も立ち止まらずに社会の期待や流れに乗って生きてきた人ほど、ある日突然「虚しさ」に襲われることがあります。
それは、自分の人生を自分で選んでこなかったという感覚が原因です。
この空虚感は、キャリアや家庭といった外的成功だけでは埋められません。
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5-2. 自己理解なき努力は摩耗につながる
一見、努力家で責任感のある人ほど、自己理解をおろそかにしたまま頑張り続け、結果としてバーンアウトするケースが少なくありません。
本来、「モラトリアム」はそうした摩耗を防ぐための“精神的な休息”です。
一時的な停止ではなく、よりよい方向へのリブートとしての意味があるのです。
6. コーチングが支える「成熟したモラトリアム」
6-1. 迷うことの再定義
コーチングは「答え」を教えません。代わりに、「問い」を深めていきます。
「あなたが本当に望む人生とは?」「それを阻んでいるものは何か?」
そうした問いに繰り返し向き合う中で、クライアントは迷う力、立ち止まる力を取り戻していきます。
それはまさに、成熟したモラトリアムの実践そのものです。
6-2. 「自分の価値観」で生きることの自由
一度、他人の期待や過去の成功体験から自由になり、自分の価値観に基づいた選択をするという体験は、大きな転換点になります。
その過程を安全・信頼の関係の中で伴走するのがコーチです。
「何者かになる」ことよりも、「何者であるかを自ら決め直す」こと。
それを支える場こそが、コーチングなのです。
7. おわりに:モラトリアムは逃避ではなく、再起動である
かつて「モラトリアム人間」と揶揄された人々の姿は、現代ではむしろ「新しい大人像」として再評価されつつあります。
迷うこと、立ち止まること、自分と対話すること。
それは決して弱さではなく、自己を更新し続ける力です。
そして、コーチングはそのための場と方法論を提供してくれます。
今、あなたが何かに迷っているなら、それはチャンスかもしれません。
モラトリアムとは、再出発のための時間。
それはあなたが「本当に生きたい人生」にアクセスするための扉なのです。
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