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ブランディングの本質とは?虚飾型と誠実型から考える「信頼の価値」

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ブランディング

はじめに:なぜ「ブランディング」が胡散臭く感じられるのか

「ブランドだから高い」。
そんな言葉を聞いたとき、どこかモヤモヤしませんか?
100円の原価のものがロゴや広告だけで1,000円に化ける――それはある意味“合法的な詐欺”にも見えます。

けれども私たちは現実に「お気に入りのブランド」を選び続けています。
そこには単なる価格操作ではなく、虚飾型と誠実型という二つのブランディングの分かれ道があるのです。


1. 経営学から見たブランディングの定義

フィリップ・コトラー(Philip Kotler)は、マーケティングを「価値を創造し、顧客と交換し、関係を管理するプロセス」と定義しました。ブランドはその中心にあり、単なる名前やロゴではなく「顧客の心に刻まれた認知の束」です。

さらに、ケヴィン・ケラー(Kevin Lane Keller)は「ブランド・エクイティ」を提唱し、ブランドは認知や連想だけでなく、顧客の経験や信頼の積み重ねで構築されると述べています。

この視点からすると、ブランディングとは「高く売る仕掛け」ではなく、顧客との長期的な関係性を築く営みであることが分かります。


2. マーケティング理論の進化とブランディング

ブランディングを理解するには、マーケティング理論の変遷を押さえておくことが役立ちます。ここでは代表的な5つのフレームを整理します。

4P(Product, Price, Place, Promotion)

古典的なマーケティング・ミックスで、供給者側の視点が強い枠組み。
→ 虚飾型ブランディングはこの段階にとどまり、「価格を吊り上げ、イメージで売る」に偏りやすい。

4C(Customer, Cost, Convenience, Communication)

※出典:Robert F. Lauterborn(1990, Advertising Age
4Pを顧客中心に置き換えた発想。顧客体験や信頼を重視することが主眼。
→ 誠実型ブランディングはこの段階から始まり、顧客視点を基盤に育っていく。

4E(Experience, Exchange, Everyplace, Evangelism)

※出典:Brian Fetherstonhaugh(Ogilvy One)
体験や価値交換、到達性、そして顧客が伝道者(Evangelist)となることを重視。
→ 誠実型ブランディングは4Eに結びつき、顧客が自発的に支持・発信するブランドへと成長する。

5A(Aware, Appeal, Ask, Act, Advocate)

※出典:Philip Kotler ほか『Marketing 4.0』
コネクティビティ時代の顧客パスを示す最新のフレーム。
→ 誠実型ブランドは最終段階のAdvocate(推奨)を自発的に生み出しやすい。

示唆

ブランドをフレームの進化(4P/4C/4E/5A)を通して横断的に見ることが重要です。
すると、虚飾型は4P的な「表層認知」に滞留しがちであるのに対し、誠実型は4Eや5Aの文脈で体験と共鳴(Resonance)を通じ、最終的に推奨まで伸びていくことが理解できます。


3. 虚飾型ブランディング:イメージで飾る幻想

特徴

  • 実態よりも広告・演出に依存
  • 高級感・希少性で価格を正当化
  • 認知は高いが、共感や信頼が欠如

ケラーの「ブランド・レゾナンス・モデル」でいえば、下層の「認知」や「連想」で止まり、上位の「共鳴」に届きません。

  • 根拠が乏しい健康食品の誇大広告
  • 豪華なパッケージとCMだけで高値をつけるブランド

うまくやれば短期的には売れますが、SNSと口コミの時代には瞬時に疑念が広がり、ブランドが崩壊します。


4. 誠実型ブランディング:信頼を積み重ねる戦略

特徴

  • 製品・サービスの品質と体験に裏打ちされている
  • 企業理念と社会的責任が一貫している
  • 顧客のライフスタイルや価値観に寄り添う

具体例

  • Patagonia:環境保護を理念に掲げ、リペアサービスまで提供
  • 無印良品:生活に寄り添うシンプルなデザインで共感を獲得
  • スターバックス:「第三の場所」という体験を提供し、顧客をブランドの仲間にする

コトラーの4Eで言えば、顧客が「Evangelist(伝道者)」となり、口コミやSNSを通じてブランドを育ててくれます。


コラム:ケラーのブランド・レゾナンス・モデルとは?

ブランド研究の第一人者ケヴィン・レーン・ケラー(Kevin Lane Keller)が提唱した「ブランド・レゾナンス・モデル」は、ブランドが顧客とどのように関係を深めていくのかを4段階で整理した理論です。ピラミッド構造になっており、下から上へ進むほど関係が強固になり、最上段で「共鳴(Resonance)」が生まれます。

  1. ブランド認知(Salience)
    顧客がブランドを知っているかどうか、思い出せるかどうかという段階。
  2. ブランド意味(Performance / Imagery)
    製品の性能やイメージによって「このブランドは信頼できる」「スタイリッシュだ」といった印象が形成されます。
  3. ブランド反応(Judgments / Feelings)
    顧客が評価や感情を抱く段階。良質さや信頼性の判断、好き・安心といった感情がここで育ちます。
  4. ブランド共鳴(Resonance)
    最終段階。顧客がブランドと強い心理的結びつきを感じ、ファンや伝道者となって積極的に発信するようになります。

このモデルが示すのは、虚飾型は下層に留まる一方、誠実型は最上段に到達し、持続的な信頼とロイヤルティを生み出すということです。


5. 虚飾型と誠実型の違いを学術的に整理

観点虚飾型ブランディング誠実型ブランディング
理論的背景4Pに留まり、供給者視点4C・4E・5Aに進化、顧客中心
価値の源泉広告・演出品質・理念・体験
ブランド段階(ケラー)認知・連想共鳴(レゾナンス)
顧客との関係表層的・一方的深層的・双方向
持続性短期的・脆弱長期的・安定
社会的評価批判を受けやすい共感・支持を得やすい

6. これからの時代に求められる「誠実型ブランディング」

近年注目される ESG経営ステークホルダー資本主義 も、誠実型ブランディングの重要性を裏付けています。
虚飾型はリスクを増大させる一方で、誠実型は社会的評価と持続的競争優位をもたらすのです。

企業が取り組むべきは:

  1. 中身を磨く(品質・サービス・顧客体験)
  2. 理念を誠実に伝える(企業文化・ストーリー)
  3. 顧客と共に育てる(対話と共感の循環)

まとめ:ブランディングを「信頼の技術」に変える

ブランディングは“虚飾”に堕すと「幻想を売る詐欺」となり、誠実さに立脚すれば「信頼を築く技術」になります。

  • 虚飾型:短期的な売上に依存し、やがて崩壊
  • 誠実型:信頼を積み重ね、顧客と共に成長

マーケティング理論の進化(4P→4C→4E→5A)やケラーのブランド論を踏まえれば、次世代に求められるのは誠実型ブランディングであることは明らかです。

ブランドは価格を吊り上げる道具ではなく、信頼を可視化する経営戦略なのです。


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