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はじめに
「ストレングスファインダー(CliftonStrengths)」の 34 資質の中で 共感性(Empathy) は、“他者の感情に同調し、言語化されないニーズをすくい上げる感情のアンテナ” と評される人間関係構築系資質です。場の空気を繊細に読み取り、言葉・表情・沈黙の背後にある感情を可視化する力は、チームの心理的安全性を高め、顧客体験を向上させます。本稿では 〈特徴〉〈どう活かすか〉〈注意点〉〈この資質を持つ人とどう付き合うか〉〈よく比較される資質との違い〉 の 5 つの観点から、共感性を徹底解説します。
1. 共感性の特徴
視点 | 内容 |
---|---|
コア衝動 | “相手の感情を感じ取り、寄り添い、適切に応答したい” |
行動プロセス | 非言語シグナル(声色・間・表情)を瞬時に検知。自分の内側で“感情のエコー”を再生し感覚的に理解。相手の状態に合わせた言葉・態度を選択。 |
強みの現れ方 | 言いづらい本音を引き出す葛藤を早期に察知し対話を促す。顧客体験を情緒面から設計する。 |
価値提供 | チームの安心感を底上げし、顧客・ユーザーの“気持ちに刺さる”サービスを創出 |
キーワード | 感情のアンテナ/情緒設計/傾聴/ノンバーバル/安全基地 |
2. 共感性を最大限に活かす方法
- “感情データ” をプロダクトに反映
ユーザビリティテストで表情やトーンを観察し、仕様書に“喜び/不安ポイント”を注記する。 - チームで感情を共有する習慣をつくる
週に一度のミーティングの最初に、「今の気分を色で表すと?」など簡単な問いかけを取り入れ、お互いの気持ちを確認する時間を持ちます。ちょっとした違和感やストレスの芽を早めに察知し、チーム内の摩擦を防ぐことができます。 - ファシリテーションで“沈黙の声”を拾う
発言が少ない参加者に「Aさん、今どんなことを感じていますか?」と扉を開き、全員の視点を統合。 - ストーリーテリングで説得力を高める
データだけでなく「顧客がこの瞬間に感じた衝撃は――」と情緒描写を加え、意思決定層の心を動かす。 - セルフ・エモーションノートで感情ノイズを整える
他者の感情を受信しすぎて疲弊しやすい。1日3分、感じた感情を書き出し“自分の感情”と“他者の感情”を仕分ける習慣を持つ。
3. 共感性に潜む落とし穴と注意点
落とし穴 | 具体例 | 対策 |
---|---|---|
感情の渦にのみこまれる | 悩みを聞きすぎ気分が沈む | 感情ノート+リカバリー時間(散歩・呼吸法)をカレンダーに組み込む |
客観性の欠如 | 同情的になり厳しいフィードバックを避ける | “事実と感情を二軸で整理” のフレームで会話 |
意思決定の遅延 | 全員の気持ちを考慮しすぎ決断が先延ばし | “合意ライン” を事前設定:80%納得でGO など |
境界線のあいまいさ | クライアントの問題を自宅でも考え続ける | “就業前後の感情シャットダウン儀式” を設ける |
4. 共感性を持つ人との付き合い方・コーチングヒント
- 感情の共有を正面からお願いする
「この提案への率直な気持ちを教えて」と聞くと洞察が得られ、本人も価値を実感。 - “感情×事実” の二重ルーペで議論を進行
共感性が感じた情緒シグナルを、他メンバーがデータで補強するワークフローを作ると強みが倍増。 - 感情を整理する時間を意識的につくる
プレゼンやコーチングなど、人と深く関わる活動のあとには、10分でもよいので感じたことを振り返る時間をとりましょう。感情を外に出して整えることで、疲労の蓄積を防ぐことが可能。 - 難しいフィードバックを頼る
共感性は相手を傷つけずに核心を伝えるのが得意。コンフリクトの場面で“翻訳者”役を任せると円滑化。 - “感情サーモメーター”を導入
プロジェクトの温度感を週次でスコア化し、共感性が解析→施策提案。心理的安全性の KPI 化に貢献。
5. よく比較される資質との違い
5-1 共感性 vs 個別化(Individualization)
項目 | 共感性 | 個別化 |
---|---|---|
注視点 | 今この瞬間の感情 | 人の独自性・得意領域 |
主なアウトプット | 気持ちへの寄り添い/安心感 | パーソナライズされた配置・支援 |
判断基準 | 感情の振動数 | 才能・スタイルの違い |
リスク | 情緒的巻き込まれ | 個別対応による複雑性 |
コンビ活用 | 共感性が感情を察知→個別化が最適サポートを設計 |
5-2 共感性 vs 調和性(Harmony)
項目 | 共感性 | 調和性 |
---|---|---|
目的 | 感情理解・共有 | 対立回避・合意形成 |
手法 | 傾聴・情緒言語化 | バランス案提示・妥協点探索 |
強み | 心理的安全性の醸成 | 争点の早期解決 |
リスク | 巻き込まれ | 中途半端な妥協 |
コンビ活用 | 共感性が根底にある感情を掘り、調和性が折衷案を形に |
6. まとめ
共感性は “感情を可視化し、場に安心とつながりを生む” 資質です。
- 特徴:非言語シグナルを察知し、言葉にできない感情ニーズを拾い上げる
- 活かし方:感情データのプロダクト反映、感情チェックイン、沈黙の声を拾うファシリ、ストーリーテリング、セルフ・エモーションノート
- 注意点:情緒的巻き込まれ、客観性欠如、意思決定遅延、境界線のあいまいに注意
- 付き合い方:感情共有依頼、データ補強フロー、放電時間、難しいフィードバックの依頼、感情のKPI 化
- 比較:個別化とは “今ここの感情と個性”、調和性とは “感情の共有と合意形成” の対比
共感性がうまく活きれば、チームは “感情の無人化地帯” から脱却し、高い心理的安全性と顧客共感価値 を同時に手に入れることができます。あなた自身やメンバーにこの資質があるなら、本稿を参考に “感情のアンテナ” を組織の成長ドライバーへ昇華させてください。
補足ポイント
1. 資質の成熟度(Maturity)に応じた変化
- 未成熟な共感性は、感情に巻き込まれて疲弊しやすく、「優しすぎて仕事にならない」と見られがち。
- 成熟すると、「感情を感じる力」を構造的に活かす設計者となり、対人関係・顧客対応・組織文化に貢献する“情緒の通訳者”となる。
- 例:以前は「相手の気持ちが重くてつらい」と感じていたが、成熟後は「この感情をどう扱うとチームに良い影響を与えられるか」と再定義できるように。
2. 「聴く力」とのバランス
- 共感性の“聴く”は感情の波長を捉える能力だが、自分の内側に取り込みすぎると燃え尽きるリスクもある。
- 相手の話を聴きながらも、「自分は何を感じたか」「どう反応したいか」をメタ認知で仕分ける力が、共感性の成熟度を高める鍵となる。
- セルフエモーションノートや内省の時間はそのバランスを取る重要な習慣。
3. 他の資質とのコンビネーション例
- 責任感(Responsibility)×共感性
→ 相手の感情を重く受け止め、その想いを“約束”として必ず遂行する誠実な共感リーダー。 - 回復志向(Restorative)×共感性
→ 感情の不具合や摩擦を見抜き、関係修復や感情的な安心の“修繕”を行う対人トラブルの修復職人。 - 内省(Intellection)×共感性
→ 感じ取った感情を深く咀嚼し、相手の行動や背景を理解する静かで洞察深い共感者。
4. バルコニーとベースメントの対比
- バルコニー(高成熟度):
- 感情の流れを「判断材料」として使いこなし」、対話の質・意思決定・チーム構造にまで良い影響を与える。
- “空気を読む”だけでなく、“空気を整える力”へ昇華する。 - ベースメント(低成熟度):
- 他者の感情に巻き込まれ、引きずられ、感情疲労を起こす。
- 厳しい判断や対立を避け、「優しさゆえに組織課題に向き合えない」といった“優しさの限界”に陥りがち。
5. デジタル時代における活かし方
- オンライン環境では非言語のシグナルが見えづらくなるため、共感性の強みが埋もれやすい。
- 顧客インサイト分析やUX設計においても、数値に現れない“情緒ニーズ”を読み取る“感情ナビゲーター”として高く評価される。
7. 共感性の特徴はこちらの動画から!
参考文献
- Gallup. “The Strategic Theme: How You Can Productively Aim Your CliftonStrengths Talent.” Gallup.com.
- Gallup. “Strategic Thinking Domain of CliftonStrengths.” Gallup.com.
- Rath, T. さあ、才能に目覚めよう srengthsFinder 2.0. 日本経済新聞出版, 2017.
- Gallup. ストレングスリーダーシップ. 日本経済新聞出版社, 2013.
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