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中国全省を旅して 【Vol.5】|広東省虎門:アヘン戦争の傷跡と再出発の記憶

2025年5月27日

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アヘン戦争
広東省虎門に残るアヘン戦争の傷跡

コロナ明け、再始動した小さな旅の始まり

コロナウイルスの発生で全く身動きが取れず、4ヶ月近く深圳に缶詰状態だった2020年の6月、徐々に人々が動き出すのを感じた。旅を再開しようと決意するも、まだ遠出するのは怖い。なので深圳からほど近い場所から徐々にスタートすることを決めた。場所は広東省东莞と惠州、ここは新卒でソニー製品のサプライチェーンをしていたころにも何度も聞いたことのある場所だったが訪問したことはなかったので行くことを決めた。2020年当時の东莞は深センの北に位置する都市で人口は約850万人。面積は深圳より広く、今後更なる発展が見込まれていた。深センと地下鉄で接続される計画もあり、大きな経済的ポテンシャルをひめた街。僕はまず深圳から鉄道で【虎門】という街を訪れた。この街は前回の記事、香港編でも紹介したアヘン戦争に関する博物館がある街だ。友人からこの博物館の存在を聞き、是非一度訪れたいと思っていた。虎門は1839年から始まった第一次アヘン戦争の重要な舞台となった場所だ。香港というアヘン戦争で割譲された街を訪問後、この虎門を訪れるのは広東省の近代史を知る上でも貴重な体験となった。このアヘン戦争の歴史については以下のコラムで簡単にまとめたので興味のある方はご覧いただきたい。


コラム①:虎門とアヘン戦争の関係

アヘン戦争
博物館では多様な歴史資料を体系的に閲覧することができる

広東省の虎門(フーメン、Humen)は、アヘン戦争(特に第一次アヘン戦争、1839〜1842年)の重要な舞台となりました。

虎門とアヘン戦争の関係

  1. 林則徐によるアヘン廃棄(1839年)
    虎門は、アヘン戦争の直接的な引き金となった林則徐(りんそくじょ)によるアヘン廃棄事件の現場です。彼は清朝の特使として広州に赴き、アヘン貿易を取り締まり、押収した大量のアヘン(約1,000トン)を虎門の海辺で公開処分(焼却・海水処理)しました。この行動はイギリス側の反発を招き、アヘン戦争勃発へとつながります。
  2. 虎門要塞と英清の戦闘
    アヘン戦争では、虎門の要塞(虎門砲台)は戦略上重要な防衛拠点でした。イギリス軍はこの砲台を攻略し、清朝側の防衛を突破していきます。特に1841年には虎門砲台をめぐって激しい砲撃戦が行われ、清朝の軍事的劣勢が明らかになります。

まとめ:

  • 虎門は林則徐がアヘンを処分した場所 → 戦争の引き金。
  • 虎門砲台は清朝の防衛拠点 → イギリス軍により陥落。
  • したがって、虎門はアヘン戦争の象徴的・実際的な舞台です。

歴史から国を見る、国から人を見る

日本人でも香港が好きな人は多いと思う。僕も大好きだ。しかし、このアヘン戦争の歴史を改めて振り返ると、軽々しい気持ちで香港という街を捉えることが難しくなる。そこには欧米列強との激しい争いから生まれた悲しい歴史が横たわっており、香港はまさにその象徴とも呼べる場所だ。どこの国でもそうだが、時間軸を横に引き伸ばし、歴史や文化という側面からその場所を感じることで、その国の新たな部分を再発見できる。その再発見を、自分なりに再定義することで、また、味わいが変わってくる。僕はコーチという仕事を通して最も重要だと感じていることの一つは「相手への関心」だ。それは国にも言えるのではないだろうか。原子論のように、ある部分だけを切り取り、その国の今だけを見てその国を判断するのではなく、できる限り歴史と文化への関心を示すことで、無駄な嫌悪感を避けることができる。関心を示し、共感を示した上で、フィードバックをする。これは人に対しても、国に対しても同じなのではないか、そんなことを感じるのである。


虎門のローカルレストランで感じる食と人

アヘン戦争
地元の名物料理である烧鸭濑粉

当時の僕は広東省の料理が大好きだった。ローカルのお店が大好きな僕は、中国の有名なグルメアプリである大众点评を使って地元の有名店を探した。そこで目にしたのは地元のレストランに入った。このお店は広東料理の代名詞とも言える烧鸭(ローストダック)や叉烧(チャーシュー)などを出す地元の人気店らしい。このお店の売りはどうやら濑粉(lài fěn/ライフェン)というこの地方特有のビーフンのようなものだ。一般的なビーフンとは製法が異なるらしく、普通のビーフンよりも太くてもっちり、食べ応えがあり、スープに合うとのこと。僕が食べたのは烧鸭濑粉(ローストダックの濑粉)、深圳ではよくご飯の上にローストダックを乗せたものを食べていたがこの食べ方は初めてでとても新鮮だった。こういった地元のお店で、地元の方達と一緒にローカル料理を食している時は、「味」という側面以外の気づきがある。

あの熱気に満ちた広東省の気候、虎門というアヘン戦争の歴史を感じながら、初めての地元の食事を地元の人々に紛れて口に運ぶ。当時の僕は、愛する仕事を失い、母を失い、これからの人生について思索の日々を送っていた。そして、勇気を振りぼって行動し、興味のど真ん中にあった中国近代史と中国文化、その現場に身を置くことで、好奇心が脳の可塑性を刺激し、まるで新しい学びの回路が形成されるかのように感じられたことを昨日のことのように覚えている(Kolbの体験学習モデルにもあるように、実際の体験が学びを深化させるプロセスを体感していたのだろう)。


五感で感じ、動き、再びつながる

失った好奇心を取り戻すためには、今一度好奇心を掘り起こさなければいけない。そこには理屈はない。「やりたい、感じたい、動きたい」。こういった純粋で動的な好奇心に誘われ、動く。その動く中で”感じる”何かを大切にする。その繰り返しこそが、当時の僕には必要だったのだろう。コロナで動けなかった、旅を中断せざるを得なかった自分の新たなスタートとして選んだこの虎門という街で、僕の中にある何かがふつふつと湧き立ち始めた感覚が、確かにあった。


自分の目で見ることの大切さ、ファーウェイのオフィスへ

そして、食事を終えた後、僕はお店前に陣取っていたバイクタクシーを捕まえてファーウェイの东莞オフィスに行ってみたいので連れて行って欲しいとお願いした。日本では様々な面で叩かれることが多いファーウェイだがその心臓部とも言えるオフィスがこの広東省の东莞にある。僕は世界というのは本当に興味深いと常々感じる。日本やアメリカで叩かれているファーウェイだが、中国では英雄のような企業だ。歴史を振り返れば、見る側が変われば正義にも悪にもなる。かけるメガネが違えば白にも黒にもなる。そして、歴史は時代の勝者によって作られる。だからこそ僕は基本、誰かの言うこと、メディアの報道を鵜呑みにすることはない。自分の目で見たこと、感じたこと、自分の五感を通じて体験したことを信じたいというポリシーがある。僕は日本で教育を受け、上海で働き、イギリスに留学し、中国全省を旅した一人の日本人として、どこに真実があるのか、何が正しいのか、その結論を誰かの意見に委ねるつもりはない。自分が学び続けたその先にしか、この課題の答えには辿り着けないと思っている。そんなことを感じながらバイクタクシーに乗り、バスの停留所へと案内してもらった。


東莞ファーウェイと「世界の見え方」

そこでは、多くの白タクの運転手がいた。中国らしく恒例の値段交渉が始まる。最近はDidiなどの配車アプリができたので、ぼったくられるリスクはほぼない。その点はとても安心だ。当初いくらだったかはあまり記憶がないが、お互い納得の価格で合意した。そして、ファーウェイのオフィスへ移動。そこはまさに巨大な街という印象だ。中には入れなかったが、ヨーロッパ風の建物が立ち並び、街ごとファーウェイという印象だ。当時、深圳の地下鉄にもファーウェイという駅ができたばかりだったが、改めて広東省におけるファーウェイの存在感に驚かされる。この記事を書いている最近では日本の俳優の木村拓哉さんがファーウェイウォッチのCMに出演して話題になっているが、この企業が米中貿易戦争の最中、どこまで世界に影響を与えることができるのか、一人の中国ウォッチャーとして目が離せないのは確かである。

アヘン戦争
小さなヨーロッパとも呼ばれるファーウェイ松山湖キャンパス

次なる目的地へ──小さな再出発を重ねて

アヘン戦争
本が立ち並ぶ近代的なビジネスホテル

ファーウェイの見学を終え、ホテルへと移動した。開発が進んでいるからか、比較的おしゃれな内装である。当時の僕はバックパックの一人旅なので、そこまでホテルにはこだわっていなかったが、意外に整ったホテルで驚いた記憶がある。この日はホテルでゆっくりと休み、明日、僕は恵州へ向かう。歴史、文化、テクノロジーという異なるエレメンツが僕の心と体を突き抜ける。次はどんな中国が見えるのか。再び歩き出した旅は、ここからさらに深まっていく。

COACHING-L代表
刈谷 洋介

※時代背景は筆者が旅をした2019~2020年をベースに書いておりますのでご了承ください。


「変わりたい」「自分らしく生きたい」と思っているあなたへ

この旅の記録は、旅行記ではありません。

“自分を取り戻す”ための旅であり、内なる声に耳を傾けるプロセスの記録です。

「自分のままで生きる力」を取り戻したい
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そんな想いを抱えている方へ。

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中国全省を旅して 【Vol.5】|広東省虎門:アヘン戦争の傷跡と再出発の記憶
コーチ刈谷

説明会は代表の刈谷(@Yosuke_Kariya)が担当します!お待ちしています!


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