コーチング 哲学 / 思想 心理学

ジョン・デューイの「経験の再構築」とは?──教育哲学からコーチングへの応用まで

2025年6月17日

この記事は約4分57秒で読むことができます。

経験の再構築

デューイとは?──プラグマティズムと道具主義

項目内容
生没年1859–1952
出身米国バーモント州バーリントン
代表著作『思考の方法(How We Think, 1910)』『民主主義と教育(Democracy and Education, 1916)』『経験と教育(Experience and Education, 1938)』
立場プラグマティズム、道具主義(Instrumentalism)

プラグマティズムの核心は「真理=行為の有用性」。デューイは知識を“問題解決の道具”とみなし、「教育とは人生の準備ではなく人生そのもの」だと述べました。能動的な経験を通じて思考と行動を結びつけ、社会に参加しながら学ぶ――これが彼の教育哲学の出発点です。

※「真理=行為の有用性」はジェイムズ流プラグマティズムの要約で、デューイ自身は「warranted assertibility(正当化された主張可能性)」という概念で“真理”を説明しました。単なる便益よりも探究の過程で暫定的に保証される主張に重点があります。


デューイにおける「経験」概念──interaction から transaction

デューイの Experience は単なる体験談ではありません。主体と環境が連続的に作用し合う過程そのものです。初期著作では interaction と呼びますが、後期には二項対立を越える動的な連鎖を強調して transaction という語を好みました。

Experience = 人 × 環境 × 行為 × そこに付与される意味
(四者が分けがたく絡み合う“取引的過程”)

主要な特徴

  1. 能動性 ─ 経験は「受け身の入力」ではなく「環境へ働きかける行為」を含む。
  2. 連続性 (continuity) ─ ある経験は後続の経験を形成する“つながる鎖”。
  3. 意味づけ ─ 行為の帰結を解釈し、価値判断を加えるプロセスを伴う。

「経験の再構築」とは何か?──reconstruction or reorganization

『経験と教育』(1938)第 1 章でデューイは、教育の目的は

“the continuous reconstruction or reorganization of experience

と述べています。ここでの reconstruction / reorganization は「思い出し直す」ではなく、経験に付与した意味を問い直し、より妥当で能動的な枠組みに組み替えることを指します。

再構築を促す3ステップ

  1. Problematic Situation
    • 経験の中に“うまくいかない違和感”が生じる。
  2. Inquiry(探究)
    • 観察・仮説・検証を通じ意味を再評価。
  3. Transformation(変容)
    • 新しい行為と理解を採用し、次の経験へ連続させる。

コーチング実践へのブリッジ──問題状況・探究・変容の循環

デューイの探究サイクルは、GROW モデルなど現代コーチングの枠組みと親和性が高いです。

デューイの探究コーチング対応具体的な問い
Problematic SituationReality の明確化「何がうまくいっていないと感じますか?」
InquiryOptions の創出「別の視点から見たら、その出来事は何を意味しますか?」
TransformationWill / Way Forward「その学びを次にどう活かしますか?」

重点スキル

  • リフレクティブ・リスニング:感情/行動/価値の3層を可視化。
  • リフレーミング:敗北 ➡︎ 「価値を守る挑戦」等、意味づけの転換。
  • 連続性の強調:過去‐現在‐未来を一本のストーリーに束ねる。

キャリア支援とナラティブ再編集──失敗を成長物語に変える

職務経験の語り直し

履歴書は「事実列挙」よりも「意味づけの物語」が重要です。

例:「営業を辞めた ≠ 挫折」→ 「顧客価値と自分の信念が合わず、真に貢献できる場を探す転機」と再解釈。

ライフストーリーの統合

Savickas のライフデザイン理論でも、アイデンティティは「再編集可能なナラティブ」。デューイ的視点を加えると、困難な経験は“transaction”の素材となり、再構築によって自己効力感とキャリア決定の納得度が高まります。


経験を再構築する4フェーズの問い例

フェーズコーチの問い目的
① 過去を丁寧に描写「そのとき、身体感覚として何を覚えていますか?」具体的事実と感情を分離し、観察可能にする
② 意味づけ・価値を抽出「その行動は何を守ろうとしていたのでしょう?」背後の価値観・信念を言語化
③ 新たな選択肢を生成「もし今、同じ状況ならどう選択しますか?」変容の可能性を探る
④ 未来へ統合「次の1週間で試せる小さな一歩は?」行為に落とし込み、連続性を確保

おわりに──コーチは「再構築の伴走者」

私たちは過去の出来事そのものではなく、「出来事に与えた意味」に生きています。デューイの言う reconstruction or reorganization of experience は、

  • 違和感を問題状況として認識し、
  • 探究を通じて意味を組み替え、
  • 変容をもたらすことで未来の経験を豊かにする、

という終わりなき学習のプロセスです。

コーチやキャリア支援者は、この循環を 安全かつ挑戦的な対話空間で後押しする伴走者と言えるでしょう。
「人は経験そのものから学ぶのではなく、その経験をどう振り返り再編成するかで学ぶ」―― この精神はデューイの教育哲学に確かに息づいています。私たち自身もまた、クライアントと共に学び続ける存在でありたいものです。


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