コーチング 心理学

その価値観、本当に自分のもの?:「取り入れ(introjection)」が生む偽りの自分軸

この記事は約5分4秒で読むことができます。

取り入れ

その価値観、本当に自分のもの?

はじめに:なぜか満たされない、その理由は?

「ちゃんと評価されているのに、満足できない」
「目標を達成したのに、虚しさが残る」
「他人の期待には応えられているけど、自分の人生を生きていない気がする」

こうした感覚に心当たりはないでしょうか?

それはもしかすると――
自分の価値観だと思っていたが、本当は“他人から借りたもの”だったからかもしれません。

本記事では、心理学の概念「取り入れ(introjection)」をもとに、偽りの自分軸が生まれるメカニズムと、それを見抜く方法を丁寧に解説します。


取り入れ(introjection)とは何か?

● 定義

「取り入れ」とは、他者の価値観や信念を無批判に内面化する心理的プロセスです。
精神分析やゲシュタルト療法で使われる用語で、幼少期に形成されることが多いとされています。

● どうやって起こる?

たとえばこんな場面:

  • 「男は泣くな」と親に言われて育った → 感情を抑えるクセがつく
  • 「いい子でいないと嫌われる」と教師に言われ続けた → 自分を演じる習慣がつく
  • 「大企業に入ってこそ一人前」という社会の空気 → キャリア選択に影響

これらが繰り返されるうちに、自分で選んだつもりの価値観が、実は外から取り込んだものになっているのです。


なぜ“取り入れ”は問題なのか?

一見、取り入れた価値観でも社会でうまくやれているように見えるかもしれません。
しかし、以下のような問題を引き起こします。

① 自己否定が強くなる

取り入れた価値観は、自分の本音とズレているため、“内なる監視者”として厳しく自己を責める存在になります。

例:「成果を出さない自分には価値がない」「努力が足りない」と自分を追い詰める。

② 意志決定が外部依存になる

「こうすべき」「こうあるべき」に縛られ、自分の感覚よりも他人の評価に軸を置いてしまいます。
→ 自分の内なる声が聞こえなくなる。

③ 本当の欲求が分からなくなる

「これがやりたい」ではなく、「これをやらなければ」という義務感や不安動機で動くようになります。
→ 結果、幸福感や充実感が得られず、燃え尽きやすくなります。


よくある「取り入れ」価値観の例

以下のような価値観は、実は「親・先生・上司・社会」からの取り入れであることが少なくありません。

よくある取り入れ価値観背後にあるメッセージ例
「人に迷惑をかけてはいけない」親や教師からの道徳的指導(善悪二元論)
「成果を出さなければ価値がない」競争社会、学歴社会の刷り込み
「安定こそが人生の成功」不安定な時代を生きた親世代のサバイバル戦略
「周囲と調和することが大切」同調圧力が強い環境(家庭・学校・会社)からの影響

取り入れかどうかを見抜くための5つの質問

自分の価値観が本物か、取り入れかを見分けるために、以下の問いを使ってみてください。

  1. この価値観は、いつ、どこで、誰から影響を受けたのか?
  2. それを手放したとき、自分は罪悪感よりも解放感を感じるか?
  3. 本当にこの価値観を持ちたいと、自分で選び直したことがあるか?
  4. この価値観をもとに行動したとき、心から満たされたか?
  5. 今の自分の人生に、それはまだ必要だと感じるか?

違和感、窮屈さ、義務感が強く出てくるなら、それは取り入れた“借りもの”の可能性が高いです。


本当の価値観を取り戻すには?

✔ ① 自分の感情に耳を澄ます

  • 嬉しいとき、悔しいとき、怒りを感じたとき…
    それは、自分が何を「大切にしているか」のヒントです。

✔ ② 子どもの頃の「好き・嫌い」を振り返る

  • 社会のルールに染まる前に、あなたは何を大切にしていましたか?

✔ ③ 哲学から逆算する

  • 「人間とはどうあるべきか」「自分はどんな人生を生きたいのか」
    こうした“自分なりの哲学”に立ち返ることで、価値観がより本質的に整理されていきます。

✔ ④ 他者の声と距離をとる時間をつくる

  • SNS、職場、家族の期待から一度距離を置き、自分の内側の声を聞く“沈黙の時間”を持ちましょう。

コーチングにおける取り入れの扱い方

コーチングの現場でも、クライアントが「本当は望んでいないゴール」を追っている場面によく出会います。

そんな時、コーチは以下のような問いを使います:

  • 「それをやり遂げたとして、どんな気持ちになりそうですか?」
  • 「それを目指したのは、あなたの内側から出てきたものですか?」
  • 「もしその目標を捨てても、あなたの価値は変わらないとしたら?」

このような対話を通じて、「取り入れの価値観」から「本当に自分で選びたい価値観」へと転換が起きていきます。


おわりに:借りものの価値観を手放し、自分の軸を取り戻す

私たちは、生まれてから無数の「べき論」や「理想像」を押し付けられながら生きてきました。
しかし、本当に自分らしく生きるためには――
“取り入れ”を見抜き、“自分で選び直す”勇気が必要です。

あなたが「本当に大切にしたいこと」は、何ですか?
それは、他人の期待ではなく、あなた自身の声でしょうか?


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