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1. はじめに:あなたは名詞で生きていませんか?
「あなたは何をしている人ですか?」という問いに、私たちはつい「コーチです」「経営者です」「教師です」と答えてしまいがちです。それは自然な反応のようでいて、実は私たちの生き方や意識の深層に、大きな影響を及ぼしているのではないでしょうか。
「名詞的に生きる」とは、肩書きやラベル、固定された属性で自らを定義し、それに依存する生き方とも捉えることができます。対して「動詞的に生きる」とは、自らの行為や変化のプロセスに軸足を置いた、より能動的で流動的な生き方です。
このブログでは、名詞と動詞という言語的な視点から、現代人のアイデンティティと能動性について深掘りしていきます。
2. 名詞的な生き方とは何か?
名詞的に生きるとは、たとえば「社長」「母親」「カウンセラー」といった言葉によって、自分自身を定義し、その枠内で自己認識や行動を完結させる生き方です。名詞は本質的に静的なものであり、そこには変化や成長の余白が少ない傾向があります。
もちろん、名詞によって人は安心感やアイデンティティの基盤を得ることができます。しかし、それが固定化されると、「肩書きがない自分には価値がない」といった思考に陥りやすくなります。
たとえば「教師」としての自分に強く同一化している人が、退職後に「自分にはもう何もない」と感じるケースは少なくありません。名詞的生き方の影の部分がここにあります。
3. 動詞的な生き方とは何か?
それに対し、動詞的に生きるとは、「教えている」「書いている」「支えている」といった、いまこの瞬間の“していること”に焦点を当てる生き方です。
これはエリック・フロムが『生きるということ』で述べた「To have(持つ)」から「To be(在る)」への転換にも通じます。動詞的生き方は、所有や肩書きではなく、行為と存在そのものに基づいて自己を感じ、表現する道です。
たとえば「私はライターです」ではなく「私は書いている人です」と言い換えたとき、そこには変化と進行、つまり“今この瞬間に生きている”実感が宿ります。
4. なぜ「動詞的」に生きることが重要なのか?
現代社会は変化のスピードが非常に速く、かつて価値があった肩書きやスキルが数年で陳腐化することも珍しくありません。そうした流動的な時代においては、「〜である」よりも「〜している」のほうが、より柔軟に自己を再定義できる力になります。
「能動性(agency)」とは、単に行動することではなく、「自分が世界に働きかけ、意味をつくり出せる」という感覚のことです。名詞的に生きていると、この能動性がラベルに吸収され、自らの手で変化を起こす感覚が鈍ってしまいます。
動詞的に生きるとは、「私はまだ変われる」「私は今も創造している」という開かれた態度を持つことなのです。
5. コーチングと動詞的生き方:問いによって再定義される自己
ライフコーチングやエグゼクティブコーチングの現場では、「あなたは誰ですか?」という問いよりも、「今、何をしていますか?」「これから、何をしていきたいですか?」という問いが重視されます。
それは、クライアントの中にある「名詞的自己像」を一旦揺るがせ、行動主体としての「動詞的自己像」を引き出すためです。たとえば、「私は部長です」という言葉の奥にある「チームの未来を描き、部下の可能性を信じて育てている自分」という動詞的視点に気づくと、クライアントの語りが変化していきます。
また、ストレングスファインダーを例に出すと、「収集心」「最上志向」「戦略性」といった資質を名詞として捉えるのではなく、「今、どう活かしているか」という行為の視点で見ることが推奨されます。自己理解の鍵は、“どんな動詞を使って生きているか”にあるのです。
6. 名詞を捨てるのではなく、動詞を取り戻す
誤解してはならないのは、「名詞を使うこと=悪」ということではありません。私たちは社会の中で役割を持ち、肩書きや称号によってある種の信頼や文脈を得ているのは事実です。
問題は、それに“しがみついてしまう”ことです。
肩書きを名刺に書くのではなく、心の奥に刻み込んでしまったとき、人は自由を失います。「社長」という名詞を持っていても、日々「決断し」「導き」「育てて」いるのであれば、それは動詞的に生きていると言えます。
大切なのは、名詞の陰に隠れず、「今この瞬間に、私は何をしているのか?」と問い続けることです。
7. まとめ:能動性とは「今ここで生きている」実感
「名詞的に生きるか、動詞的に生きるか」という問いは、単なる言葉遣いの話ではありません。それは、自分の生き方、価値観、そして世界への働きかけ方そのものを問う、深い哲学的テーマです。
「私はコーチです」と言うよりも、「私は今、誰かの可能性を信じて問いを投げている」と言うとき、その人は確かに「生きて」います。
あなたは今、どんな動詞で生きていますか?
そして、どんな動詞で、これからを生きていきたいですか?
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