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コーチは心理学を学ぶべき?-Vol.6 – 愛するということ – エーリッヒ・フロム

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愛するということ

コーチは心理学を学ぶべき?Vol.6 – エーリッヒ・フロム「愛するということ」 – 

愛とは何か?この永遠の問いは、世代を超えて多くの哲学者、作家、そして多くの心理学者によって考察されてきました。しかし、愛の本質についての解釈は多様であり、その答えは単純ではありません。エーリッヒ・フロムの著書「愛するということ」では、愛は単なる感情や偶然の出来事ではなく、学び、修練し、成長させる技術であるという革新的な視点を提供しています。愛は日々の生活の中で直面する複雑な感情や人間関係の核心をなすものです。フロムは、愛を深く理解し実践することが、充実した人生を送るための鍵であると説いています。彼の主張する「愛の技術」を学ぶことで、私たちは自己成長を促し、より豊かな人間関係を築くことができるのです。

この記事では、フロムの理論を探求し、愛を深く理解するための具体的なアプローチを提供します。愛は単なる感情ではなく、意識的な努力と継続的な修練の結果であるというフロムの見解を通じて、愛の真の意味を再発見しましょう。この探求が、あなたの愛の理解を深め、より充実した人間関係を築く一助となれば幸いです。

エーリッヒ・フロムの主張の概要

エーリッヒ・フロムの「愛するということ」は、愛に対する深い洞察と、それを実生活に応用するための理論を提供します。フロムは愛を、単なる感情や偶然の出来事ではなく、習得し、修練し、成長させるべき技術として捉えています。彼によれば、愛は「落ちる」ものではなく、「育むもの」ものであり、自己と他者に対する深い理解と尊重から生まれるものです。

フロムは、愛にはいくつかの基本的な要素があると指摘します。これには、※配慮、責任、尊重、そして知が含まれます。彼は、これらの要素が組み合わさることで、真の愛が育まれると説明しています。愛は、他者の幸福を自分の幸福と同じくらい大切に思うことから生じ、自己犠牲ではなく、自己実現の過程として理解されるほうが良いかもしれません(この辺りはマズローの”自己実現的な人間”との共通点もあるように感じます)。

※書籍では「配慮」と翻訳されていますが、個人的には「配慮」という言葉よりも、「関心」という言葉の方がしっくりきます。

フロムは以下のように言います。

配慮、責任、尊敬、知はたがいに依存しあっている。この一連の態度は、成熟した人間に見られるものである。成熟した人間とは、自分の力を生産的に発達させる人、自分でそのために働いたもの以外は欲しがらない人、全知全能というナルシシズム的な夢を捨てた人、純粋に生産的に活動からのみ得られる内的に裏打ちされた謙虚さを身につけた人のことである。」

エーリッヒ・フロム , 愛するということ 【新訳版】

他者に依存せず、独立し、そのうえで、愛すると決意した人と関係を育むことの重要性も強調されていますが、この4つの基本的要素を高めることが真の愛へと到達する道です。

さらに、フロムは愛を種類別に分類しています。これには、兄弟愛、母性愛、異性愛、自己愛、そして神への愛が含まれます。彼は、愛とは、特定の人間のみに対する感情や関係(一つの対象)ではなく、世界全体に対して人がどう関わるかを決定する態度、性格の方向性であると説いています。特に、自己愛はしばしば誤解されますが、フロムによれば、他者を愛するためには、まず自分自身を健全に愛することが不可欠です(自己愛と利己心を分けて考える)。

また、フロムの理論の核心は、愛は単に感じるといった感情的なものではなく、行動するものであるということです。愛は能動的な行為であり、継続的な努力と自己認識を要求します。それは絶え間ない学びと自己改善のプロセスであり、他者との深いつながりを築くための基盤となります。この視点から、フロムは愛を豊かにするための具体的な方法を提案しています。それには、自らを知ること、他者への関心、そして感情的な成熟などが含まれます。彼の主張によれば、愛を修練することは、より満足できる人生を送るための重要なステップなのです。

愛の「修練」についての具体的なアプローチ:

エーリッヒ・フロムの理論によれば、愛は技術であり、日々の修練を通じて磨かれるものです。愛を修練する具体的なアプローチをフロムから得た示唆、及びコーチの視点から考察したいと思います。

  • 自己認識の深化: 真の愛は、自分自身を理解することから始まります。自己認識の強化を通じて、自己の感情、価値観、生産性を高めるための強みや弱みなどを理解することが重要です。自己認識は、他者への共感と理解を深め、より誠実な愛情表現を可能にします。
  • コミュニケーション技術の向上: 効果的なコミュニケーションは、関係を築き、維持するための鍵です。特に他者への関心という面では”聴く技術”を磨き、感情を正直かつ適切に表現することで、深い理解と信頼関係を築きます。
  • 感情的な成熟: 愛は、感情的な成熟を伴います。これには、感情をコントロールし、衝動的な反応を抑え、状況を冷静に評価する能力が含まれます。感情的な成熟は、愛をより健全で安定したものにするでしょう。
  • 共感と関心の練習: 他者の立場に立ち、その感情や経験を理解しようとする共感は、愛の修練に不可欠です。これは、パートナーや友人の視点を理解し、支援する能力を高めます。
  • 日常の行動に愛を組み込む: 愛の修練は、特別な瞬間だけでなく、日々の小さな行動にも反映されます。親切な言葉、支援の手、理解の示し方など、日常生活の中で愛を表現することが重要です。

愛の修練は一朝一夕に成し遂げられるものではありません。それは、自己発見と成長の旅であり、絶えず努力し続ける必要があります。これらのアプローチを通じて、愛を深め、より充実した人間関係を築くことが可能となります。

まとめ

エーリッヒ・フロムの「愛するということ」における洞察は、愛が単なる感情ではなく、修練と成長のプロセスであることを教えてくれます。これは英語タイトルである「The Art of Loving」からも、彼が愛を単なる瞬間的な「落ちるもの」ではなく「技術であり、育むものである」と捉えていることが見て取れます。彼の提案する愛の技術は、自己認識、コミュニケーション、感情的成熟、共感、そして日常の行動に愛を組み込むことを通じて、私たちの人間関係を豊かにする大きな可能性を秘めています。この考えは、人間性心理学のカール・ロジャーズの「無条件の肯定的関心」や「共感的理解」という理論、また、アルフレッドアドラーの「共同体感覚」という哲学とも共通点が見られ、根本的な人間関係の問題解決における必須要素は、他者への関心や愛、そして他者を尊重することなのだとこの書籍を通じて改めて感じます。

我々は学校で、勉強を通して一人で問題解決をすることを教えられてきました。スポーツやクラブ活動を通して、チームでの問題解決についても教えられてきました。しかし、こと”愛”に関してはどうでしょうか?愛とは異なった価値観を持つ二人が、互いに関心を持ち、能動的に育むプロセスであり、待っていて得られるものではありません。”対象”を見つけさえすれば解決するものでもありません。対象を見つけることはスタートであり、愛は能動的に育むという”決意”を通して、築かれるものです。そして、愛の本質は一人という対象を超えて、より世界へと拡張されるものでもあります。

フロムの提唱する愛は一朝一夕に獲得できるものではありませんが、意識的な努力と継続的な実践を通じて、私たちはより深い愛を育むことができます。愛の修練は、単に他者との関係を改善するだけでなく、自己成長と自己実現の旅でもあるのかもしれません。この記事を通じて、皆様が愛の真の意味を再発見し、フロムの洞察を生活に適用することで、より充実した愛情関係を築く一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。愛は、私たちの生活の根幹をなすものであり、その修練を通じて、より豊かで意味のある人生を送ることができると信じています。

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