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はじめに
「ストレングスファインダー(CliftonStrengths)」の 34 資質の中で 信念(Belief) は、“揺るがない価値観を羅針盤に、長期的な使命を貫くパーパス・ドライバー” と評される実行力系資質です。外部環境や短期的な誘因ではなく、自分の内側にある“譲れない価値”が行動を決めるため、ブレない意志と一貫性がチームの道標になります。本稿では 〈特徴〉〈どう活かすか〉〈注意点〉〈この資質を持つ人とどう付き合うか〉〈よく比較される資質との違い〉 の 5 つの観点から、信念を徹底解説します。
1. 信念の特徴
視点 | 内容 |
---|---|
コア衝動 | “自分の価値観に沿った意義ある仕事を成し遂げたい” |
行動プロセス | 意思決定時に「これは自分のミッションに沿うか?」を即座に照合。利害より理念を優先し、方針が決まると揺るがず前進。チームの倫理観・社会的インパクトを意識し続ける。 |
強みの現れ方 | 方向性がぶれた組織を軌道修正。利他的なギブ精神で信頼を獲得。長期プロジェクトでも粘り強くコミット。 |
価値提供 | 価値観ドリブンな意思決定でブランドの信頼性を高め、メンバーのエンゲージメントを強化。 |
キーワード | 価値観/使命感/一貫性/倫理観/長期コミット |
2. 信念を最大限に活かす方法
- パーパスを明文化し、社内外へ発信
たとえば「○○を通じて社会的不平等を減らす」のように文章化し、ビジネス判断の基軸に据える。 - 価値観フィルターで案件を選別
案件ごとに “ミッション適合度” を 1〜5 段階で評価し、低い案件は思い切って断ることで集中力を確保。 - 非営利・CSR 活動を主導※
社会貢献プロジェクトやボランティアデーを企画し、組織のパーパス浸透を促進。 - 長期 KPI に意義指標を組み込む
売上や利益だけでなく「顧客満足度」「CO₂ 削減量」など価値観に紐づく指標で成果を可視化。 - “ストーリーテリング” で仲間を巻き込む
自分の原体験と価値観が仕事にどう繋がるかを語り、共感と自発的行動を引き出す。
※)「CSR活動」など社会貢献活動が必ずしも信念の資質を意味するわけではありません。社会的価値に限定されるわけではなく、「個人が譲れない価値観」全般に対して行動を起こします。これは、個人や組織ごとに異なる場合があります。
3. 信念に潜む落とし穴と注意点
落とし穴 | 具体例 | 対策 |
---|---|---|
頑固・柔軟性不足 | ミッションに合わないと判断し協業を拒絶 | 価値観“優先順位”を設定し、低優先領域では妥協幅を持たせる |
理想と現実のギャップ疲弊 | 会社の短期方針と衝突しモチベ低下 | ミッションにつながる中長期ロードマップを提案し折り合いを探る |
価値観押し付け | 他者へ信念を説教し対立 | I メッセージで「私にとっては大事」と個人的立場を明示 |
短期インセンティブ無視 | 業績ボーナスより社会意義を優先し周囲と温度差 | 意義目標と経済目標の“両利き”KPI を設計 |
4. 信念を持つ人との付き合い方・コーチングヒント
- 価値観に紐づけて依頼する
「このプロジェクトは○○という社会課題解決につながる」など意義を先に伝えるとコミットが高まる。 - 意義と利益のトレードオフを共に設計
信念が強調されすぎると経済合理性が抜け落ちがち。数字に強いメンバーとペアを組ませ両面を担保。 - パーパス共有ワークショップを開催
チーム全員で個人の価値観・原体験を語り合い、相互理解の土台を築く。 - 決断プロセスを透明化
会社側の戦略変更理由を丁寧に説明すると、信念資質を持つ人の不安や抵抗が軽減。 - 社会的インパクトを定量・定性でフィードバック
「導入後 3 ヵ月で教育支援プログラムの受講者が 200 名増加」など成果を可視化してさらなる推進力に。
5. よく比較される資質との違い
5-1 信念 vs 自己確信(Self-Assurance)
項目 | 信念 (Belief) | 自己確信 (Self-Assurance) |
---|---|---|
ドライブ源 | 価値観・使命 | 自己信頼・胆力 |
意思決定基準 | “理念に合うか” | “自分が正しいか” |
表現 | 理念を語る・利他的※ | 静かな自信・リスクテイク |
リスク | 頑固に映る | 独断に映る |
コンビ活用 | 信念が道徳座標→自己確信が大胆行動で実行 |
※)信念資質を持つ人が必ずしも「利他的」とは限りません。「利他的」であることが信念の本質ではなく、個人の価値観に基づいていることが重要です。利他的である場合が多いですが、あくまで傾向として捉えましょう。
5-2 信念 vs 慎重さ(Deliberative)
項目 | 信念 | 慎重さ (Deliberative) |
---|---|---|
注視点 | 価値観の順守 | リスクの最小化 |
強み | 道徳的一貫性 | 周到なリスク管理 |
リスク | 柔軟性不足 | 過度な慎重で進行遅延 |
相互補完 | 信念が方向を示し、慎重さが安全ルートを設計 |
6. まとめ
信念は “揺るがない価値観” を軸に行動することで、組織やプロジェクトに 長期的な一貫性と社会的信頼 をもたらす資質です。
- 特徴:価値観ドリブンな意思決定、長期コミット、倫理観の維持
- 活かし方:パーパス明文化、案件選別、CSR主導、意義KPI、ストーリーテリング
- 注意点:頑固・理想ギャップ・押し付け・短期無視に注意
- 付き合い方:意義提示、両利き設計、パーパス共有ワーク、決断透明化、インパクト可視化
- 比較:自己確信とは “価値観と自己信頼”、慎重さとは “理念とリスク管理” の対比
信念が適切に活きれば、チームは「何のためにやるのか」が明確になり、短期成果と長期意義の両輪駆動で持続可能な成長路線に入ります。あなた自身やメンバーにこの資質があるなら、本稿を手引きに “価値観という羅針盤” を仕事と人生の推進エンジンへ転換しましょう。
補足ポイント
1. 資質の成熟度(Maturity)に応じた変化
- 未成熟な信念は「自分の価値観こそ正しい」と固執し、対立や孤立を招くこともある。
- 成熟すると、他者の価値観も尊重しながら、自分の信念を“対話的な軸”として共有できるようになる。
- 例:以前は「これは正しくないからやりたくない」と拒絶していたが、成熟後は「自分にとっての意味を伝えた上で代案を出す」ように。
2. 「聴く力」とのバランス
- 信念が強い人は、話の中から「理念との整合性」や「ミッションへの貢献度」を意識的・無意識的にチェックしながら聴く傾向がある。
- その結果、「評価されている気がして本音を話しにくい」と感じさせてしまうことも。
- 相手の信念や価値観も尊重し、「何がその人にとって大切なのか」に耳を傾けることが、信頼関係の鍵となる。
3. 他の資質とのコンビネーション例
- 目標志向(Focus)×信念
→ ミッションからぶれずに成果に向かう“信念型ストライカー”。一貫性と推進力でプロジェクトをリード。 - 責任感(Responsibility)×信念
→ 約束と信念の両輪で動く“義務と理念の実行者”。チームの価値観体現者として信頼される。 - 内省(Intellection)×信念
→ 自分の信念を深く思索し、言語化・哲学化できる“思想家型リーダー”。組織のビジョン設計にも強み。
4. バルコニーとベースメントの対比
バルコニー(高成熟度):
- 組織や社会にとって「意味ある選択」を促す存在として、長期的な信頼と共感を獲得。
- 多様な意見の中でも、自らの信念を道標に調和を生み出せる。
ベースメント(低成熟度):
- 「譲れない」が過度に強調され、頑なさや押しつけがましさに映る。
- 柔軟性に欠け、「理念を振りかざす人」「扱いづらい人」と誤解されることもある。
5. デジタル時代における活かし方
- ビジョンやパーパスが見えにくくなりがちなリモートワーク環境では、「理念の軸を言語化・可視化する役割」として信念が重要になる。
- Slackや社内ブログで「なぜこの仕事をしているのか?」を発信することで、チームの方向性が揃いやすくなる。
- 組織が目先のKPIに流されがちな時代に、“価値観と成果の両利き思考”を組み込むブレーンとしても信頼される。
7. 信念の特徴はこちらの動画から!
参考文献
- Gallup. “The Strategic Theme: How You Can Productively Aim Your CliftonStrengths Talent.” Gallup.com.
- Gallup. “Strategic Thinking Domain of CliftonStrengths.” Gallup.com.
- Rath, T. さあ、才能に目覚めよう srengthsFinder 2.0. 日本経済新聞出版, 2017.
- Gallup. ストレングスリーダーシップ. 日本経済新聞出版社, 2013.
コラム:自己確信と信念の違いとは?―統合される2つの「内なる軸」
ストレングスファインダーにおける「自己確信(Self-Assurance)」と「信念(Belief)」は、どちらも“内なる強さ”を示す資質です。一見よく似ていますが、その心理的な出発点と行動の動機づけには明確な違いがあります。
自己確信とは何か?
自己確信とは、自分の判断や直感を信じて進む資質です。他者の意見に左右されず、自分の内なる感覚に従って道を選び、行動できます。特に不確実な状況においても「私はできる」「私は正しい」と思える自己効力感が強く働きます。
ポイントは、判断の根拠が「自分の感覚」や「直感」にあることです。たとえ価値観が明確に言語化されていなくても、自分の感覚を信じて迷わず行動できるのが、自己確信の大きな強みです。
信念とは何か?
一方、信念とは「自分が大切にしている価値観や人生観」に根ざして行動する資質です。お金や地位などの外的報酬よりも、「これが正しい」「この使命を果たしたい」といった内的な価値観が行動の原動力となります。
信念を持つ人は、自分の価値観に反する行動には強い違和感を覚えます。正しさ、倫理、誠実さ、宗教観、家族愛などが、判断や行動のコンパスとなります。
自己確信と信念の違いはどこにあるのか?
簡潔にまとめると、以下のように整理できます。
資質 | 信じているもの | 出発点 | 行動の原動力 |
---|---|---|---|
自己確信 | 自分の判断や感覚 | 直感・判断力 | 「私はできる」「私は正しい」 |
信念 | 自分の価値観 | 人生観・道徳観 | 「これが正しい」「これに意味がある」 |
「自己確信+信念」が統合されるとどうなるか?
実は、両者は互いに排他的ではなく、統合されることでより強力な“自分軸”になります。
自己確信を持つ人が自己理解を深め、自分の価値観や信念を言語化すると、単なる直感ベースの判断から一歩進み、「価値観に沿った直感」に進化します。
この状態は、以下のように表現できます。
「私はできるし、それは私の信じる価値に沿っているからやる」
これは、価値観に根ざした確信、つまり「信念を伴った自己確信」です。行動には一貫性と説得力が生まれ、リーダーシップや意思決定においても、非常に信頼される資質となります。
おわりに:資質は“統合”してこそ力になる
ストレングスファインダーは、資質同士の違いを知ることに意味がありますが、それと同じくらい大切なのが「どう統合していくか」という視点です。
自己確信が強い人が、自分の価値観や信念を明確にすること。
信念が強い人が、自分の判断や直感を信じて前に進む力をつけること。
このような内的統合が進むほど、私たちはより強く、柔軟に、そして意味ある人生を歩めるのではないでしょうか。
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