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1. はじめに
私たちの身体と心は切り離せない関係にあります。特に「食事」は身体だけでなく、メンタル面にも大きな影響を与える要素です。ストレスを感じて甘いものを食べたくなる経験は多くの人がしているでしょうし、逆に空腹が続いてイライラしてしまったり、集中力が落ちたりするのもよくある話です。食生活と精神状態が密接に関係していることは、近年の研究や健康情報の普及によって多くの人が認識するようになりました。
しかし、「具体的にどういう食品がどのようにメンタルに影響するのか」を体系的に理解する機会は、なかなか多くありません。そこで本記事では、「GI(グリセミック・インデックス)」というキーワードを軸に、高GI食品がメンタルにどのように影響するのかを解説します。さらに、高GI・中GI・低GI食品の代表例も一覧にしてご紹介しますので、日々の食生活を振り返るきっかけにしていただければと思います。
2. GI(グリセミック・インデックス)とは何か
GIとは「Glycemic Index(グリセミック・インデックス)」の略で、食品を摂取したときにどれくらい速く血糖値が上昇するかを示す指標です。具体的には「ブドウ糖を摂取したときの血糖値の上がり方を100」として、その食品を食べたときの上昇度合いを比較して数値化します。一般的には以下のように分類されます。
- 高GI食品 : GI値70以上
- 中GI食品 : GI値56〜69
- 低GI食品 : GI値55以下
GI値が高い食品ほど、食後に血糖値が急激に上昇しやすく、逆にGI値が低い食品ほど血糖値の上昇は緩やかだと考えられています。
GI値が注目される理由
食事をすると血糖値が上がり、膵臓からインスリンというホルモンが分泌されることは多くの方がご存じでしょう。インスリンは体内の細胞に血中のブドウ糖を取り込ませて、エネルギー源として利用できるようにする重要なホルモンです。しかし、急激に血糖値が上がると、そのぶん大量のインスリンが分泌されます。すると血糖値が急降下し、低血糖状態に近づくことで、体や脳に様々な影響が出てくるのです。
GI値は単に「糖質が多いか少ないか」だけでは測れない場合もあるため、一つの基準として覚えておくと、食事の選択をする際にとても便利です。特にダイエットや血糖値コントロールに取り組む人はGI値を意識して食品を選ぶと良いとされています。
3. 高GI食品が血糖値とインスリンに与える影響
前述のとおり、高GI食品とはGI値70以上の食品を指します。これらの食品を摂取すると、血糖値が短時間で急上昇しやすく、体内ではそれを抑制するために大量のインスリンが放出されます。その結果、血糖値は一時的に急降下することがあります。この急上昇から急降下という乱高下現象は、私たちの身体だけでなく、メンタルにも以下のような悪影響を及ぼす可能性があります。
- 急激な疲労感
血糖値が急に下がると、脳のエネルギーが一時的に不足します。そのため、強い倦怠感や集中力低下、眠気などを引き起こしやすくなります。 - 感情の不安定化
血糖値が急降下したとき、私たちはイライラや不安などのストレス反応を感じやすくなります。これは脳が一時的に「エネルギー不足だ」と認識し、緊急事態としてアドレナリンやコルチゾールなどのストレスホルモンを分泌することが一因です。 - 過食につながる可能性
急に血糖値が下がると、再び糖分を欲するようになります。これにより、甘いものをさらに摂りたくなり、結果的に過食や暴飲暴食に陥るリスクが高まります。
以上のように、高GI食品を多量に摂取すると、身体とメンタルの両面でマイナスの影響を受けやすいのです。特に忙しい現代人は、空腹感を素早く満たしたいという理由で、高GIの食品や飲料を選びがちですが、その代償として血糖値の乱高下とメンタルの不安定化を招く可能性が高まります。
4. 高GI食品がメンタルに与える影響
では、高GI食品の摂取が具体的にどのようにメンタル面に作用するのか、もう少し掘り下げてみましょう。
4.1 血糖値乱高下による気分の浮き沈み
血糖値が急上昇・急降下を繰り返すと、身体は常に「正常な血糖値を保とう」と努力し続けなければなりません。そのため、自律神経やホルモンバランスが乱れやすくなります。特に、急降下したときには前述のように不安感やイライラ、疲労感が強まることがあります。
たとえば、朝食を高GI食品(白米や白パン、砂糖の多いシリアルなど)で済ませると、午前中のうちに血糖値が乱高下し、仕事や勉強のパフォーマンスが低下したり、ストレスを感じやすくなったりするかもしれません。その結果、昼前に甘いお菓子に手を伸ばしてさらに血糖値を上げ、また急降下するという悪循環に陥るリスクがあります。
4.2 ストレスホルモンの分泌
血糖値の急激な低下は体にとって“危機”と認識される場合があり、アドレナリンやコルチゾールといったストレスホルモンが分泌されます。ストレスホルモンが過度に分泌される状態が続くと、心身ともに疲弊し、気持ちが落ち着かなくなったり、不安や焦燥感を抱きやすくなったりします。これは軽度なら一時的なものかもしれませんが、慢性的になると鬱傾向などにつながる可能性も指摘されています。
4.3 セロトニンなどの脳内神経伝達物質への影響
脳内の神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンは、私たちの心の安定や幸福感に深く関わっています。糖質の摂取はこれらの神経伝達物質の分泌や合成に何らかの形で関わっていることが知られていますが、急激な血糖値の変動は脳内環境を不安定にする要因のひとつと考えられます。特に高GI食品の過剰摂取は、短期的に気分を高揚させる一方で、反動として血糖値の低下により不安定さを増幅させるリスクがあるのです。
5. 中GI食品とバランスの重要性
GI値が高いからといって、すべて悪い食品だと一概に決めつけることはできません。同様に、GI値が低いからといって、どれだけ食べても良いというわけでもありません。重要なのは「バランス」と「タイミング」です。
5.1 中GI食品の意味
中GI食品はGI値56〜69の範囲にある食品で、高GIほど血糖値を急激に上昇させるわけではありませんが、低GIほど緩やかな上昇でもありません。中間的な位置づけのため、食事全体のバランスの中で選択することが望ましいとされています。たとえば、運動前やトレーニング後など、適度に血糖値を上げたいタイミングでは中GI食品が有効に使える場合があります。
5.2 バランスが大切な理由
GI値は一つの指標であり、栄養バランスの全てではありません。タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維など、他の栄養素との兼ね合いが非常に重要です。低GI食品でも、質の悪い脂質や塩分が過剰なものを大量に摂取すれば、結果的に体調やメンタルを崩す原因になることもあります。
6. 低GI食品のメリット
GI値55以下の食品を「低GI食品」と呼びます。これらは、血糖値の上昇が比較的緩やかであるとされ、ダイエットや生活習慣病の予防などにも役立つと言われています。メンタル面でも、血糖値が安定しやすいため、情緒の安定や集中力の維持にも寄与する可能性があります。
6.1 血糖値の安定によるメリット
血糖値が安定すると、前述のイライラや不安感が生じにくい傾向があります。エネルギーが継続的に供給されるため、脳のパフォーマンス維持や集中力のアップにもつながりやすいでしょう。メンタル面でも安定感を得やすく、気分の波が抑えられるメリットがあります。
6.2 栄養バランスとの相乗効果
低GI食品として挙げられる全粒穀物や豆類、野菜などは、食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富な場合が多いです。食物繊維の豊富な食品は消化・吸収がゆっくり進むため、血糖値の急上昇を抑えるだけでなく、腸内環境の改善や便秘予防にも効果的です。腸内環境の改善はメンタルヘルスにも良い影響を与えることがわかってきています。腸は「第二の脳」と呼ばれるほど神経細胞が多く、セロトニンの大部分が腸で作られるとも言われています。よって、低GI食品を中心としたバランスの取れた食生活は、メンタルを安定させる上でも大いに役立つと考えられます。
7. 高GI・中GI・低GI食品の一覧
ここでは代表的な食品のGI値を目安としてご紹介します。実際のGI値は調理方法や食べるタイミング、食品の組み合わせによって変化することがあるため、あくまでも参考値としてご覧ください。
7.1 高GI食品(GI値70以上)
- 白パン (GI値約70〜75)
- 白米 (GI値約70〜88) ※銘柄や炊き方による
- フランスパン (GI値約95)
- ジャガイモ(マッシュポテト) (GI値約80〜90)
- 餅 (GI値約85)
- コーンフレーク(加糖タイプ) (GI値約75〜80)
- グルコース(ブドウ糖)飲料 (基準:GI値100)
- 砂糖が多いスナック菓子・チョコレート菓子 (概ね70以上)
※ポテトチップスなどは脂質の影響でGI値が下がる場合もありますが、油や塩分過多になりやすい点に注意。またスナック菓子などの加工食品はトランス脂肪酸など別の意味で問題があります。
7.2 中GI食品(GI値56〜69)
- 玄米 (GI値約55〜68) ※品種や炊き方で幅がある
- オートミール (GI値約55〜65)
- ライ麦パン (GI値約60〜65)
- そば(乾麺) (GI値約59〜65)
- 全粒粉パン (GI値約50〜70の幅あり)
- バナナ(熟度による) (GI値約55〜65)
中GI帯の食品は、一般的には高GIよりも血糖値上昇が緩やかとされます。ただし食べ過ぎや調理方法によってGI値が変動するので注意が必要です。また、パンにはグルテンが含まれているのでGIが中程度でも注意が必要です。
7.3 低GI食品(GI値55以下)
- 大豆・豆製品(豆腐、納豆など) (GI値30前後)
- 野菜全般(特に葉物野菜) (GI値概ね30以下〜40以下)
- 全粒パスタ (GI値約50前後)
- リンゴ (GI値約35)
- グレープフルーツ (GI値約25)
- ヨーグルト(無糖) (GI値約35)
- ナッツ類(アーモンド、くるみ等) (GI値約15〜25)
低GI食品は、食物繊維が豊富なものが多いため、血糖値の乱高下を抑えたり満腹感を持続させたりする効果が期待できます。またヨーグルトも低GIですが、あくまで無糖です。人によっては乳製品に含まれるカゼインに注意が必要です。
8. 食生活を改善するためのポイント
8.1 食事の頻度やタイミングを柔軟に考える
従来は「1日3食をきちんと摂る」ことが推奨されてきましたが、近年では時間栄養学や断続的ファスティング(インターミッテント・ファスティング)などの観点から、「自分に合った食事回数やタイミングを探る」アプローチが注目されています。
- 断続的ファスティング(インターミッテント・ファスティング)
一定の時間は食べない(ファスティング)状態を作り、その後に食事時間を設けるスタイルです。例えば「16時間は何も食べず、8時間の間に2食とる」「14時間空けて残り10時間で2食とる」など様々な方法があります。
血糖値の乱高下を抑えやすく、またケトン体を生みやすい時間帯を確保できることがメリットとして挙げられます。 - 食事回数よりも「何を食べるか」が大切
食事の回数を減らしたり増やしたりすることが目的ではなく、血糖値コントロールや栄養バランス、満腹感の得られ方などを観察しながら自分に合ったペースを見つけましょう。
8.2 ケトン体をエネルギー源として活用する
ケトン体とは、糖質摂取が少ない状態や断食状態、激しい運動などによって肝臓で生成される代替エネルギー源の総称です。脳は通常ブドウ糖を主要エネルギー源としていますが、ケトン体も十分なエネルギー源となることがわかっています。
- ケトン体のメリット
- 血糖値の乱高下を抑える
- 持続的なエネルギー供給による集中力の向上
- 食欲コントロールのしやすさ(炭水化物への強い渇望が減る)
- 糖質を控えめにする食事法
いわゆる「低糖質ダイエット」や「ケトジェニックダイエット」は、糖質摂取を制限し、脂質やタンパク質からエネルギーを摂取することで身体をケトン体モードに導く方法です。血糖値を大きく揺さぶらないことから、メンタルを安定させる効果も期待されています。ただし、体質や既往症によっては注意が必要な場合もあるため、導入する際は専門家に相談することをおすすめします。
8.3 運動前に高GI食品を摂る必要はない
「運動前に高GI食品を摂ってパフォーマンスを上げる」という考え方は昔から存在します。しかし、近年では脂質代謝が十分に働いている身体(いわゆる“脂質燃焼体質”や“ケトン体モード”)であれば、運動前に必ずしも高GI食品を摂る必要はないとされるケースも増えてきました。
- 脂肪(ケトン体)をエネルギー源とする
運動時にエネルギーとして使われるのはブドウ糖だけではありません。ケトン体を有効に使える状態なら、空腹や低GI食品でも十分に動くことが可能です。 - 高GI食品のデメリット
血糖値を急上昇させることで、一時的に力が出ても、後で急降下するリスクを伴います。長時間の運動や、運動後のメンタル面を考慮すると、安定したエネルギー供給の方がメリットが大きいこともあります。
8.4 食物繊維・タンパク質・良質な脂質をバランスよく
高GI・低GIだけを意識していても、極端に炭水化物を減らし過ぎたり、脂質ばかり増やしてバランスを崩したりすると、健康を損なう可能性があります。重要なのは、自分の身体が必要とする栄養をバランスよく摂るということです。
- 食物繊維 : 野菜、きのこ、海藻、豆類、ナッツなどに多く含まれ、血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。また、腸内環境の改善に役立ち、メンタルヘルスにも良い影響が期待できます。
- タンパク質 : 筋肉や臓器、免疫機能の維持だけでなく、神経伝達物質の合成にも必要不可欠です。肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などから良質なタンパク質を摂りましょう。
- 良質な脂質 : オリーブオイル、アボカド、ナッツ類、青魚に含まれるオメガ3系脂肪酸などは、炎症を抑える効果や脳の機能をサポートする効果が期待できます。ケトン体を利用する際も、良質な脂質がエネルギー源となることを意識しましょう。
8.5 ストレスマネジメントと生活習慣
食事の質と同じくらい、ストレスマネジメントや生活リズムの整え方も血糖値とメンタルの安定に関わっています。
- 十分な睡眠
睡眠不足はコルチゾールなどのストレスホルモンを増やし、血糖値のコントロールを乱す要因になります。また、睡眠中にも脂質代謝が進むため、ケトン体を利用する身体づくりのためにも良質な睡眠は欠かせません。 - 適度な運動
適度に身体を動かすことで、インスリン感受性が高まり血糖値コントロールがしやすくなります。ウォーキングやストレッチ、ヨガなど自分に合った運動を続けることが大切です。 - メンタルケア
環境の変化や人間関係、仕事などで感じるストレスは、人によっては食欲や食習慣に大きな影響を及ぼします。セルフケアやリラクゼーション法を取り入れ、心身のバランスを保つことが血糖値の安定にも繋がります。
9. まとめ
高GI食品は血糖値を急激に上げ下げしやすい特性があり、その乱高下がイライラや不安感、過食衝動といったメンタルの不安定要因になる可能性があります。一方で、低GI食品やケトン体を活用できる食生活へシフトすると、血糖値の変動が抑えられ、エネルギー供給が安定しやすいため、集中力や気分の安定といったメリットが期待できます。
従来の「1日3食きっちり」や「運動前に必ず高GI食品を摂る」といった考え方は、誰にでも当てはまるわけではありません。近年注目されている断続的ファスティング(インターミッテント・ファスティング)などの食事法や、ケトン体をエネルギー源として活用する生活スタイルは、血糖値の乱高下を抑えつつ適度な糖質制限を行うことで、心身のバランスを整える一つの選択肢となり得ます。
ただし、食事法には個人差が大きく、体質や既往症によっては合わない場合もあります。極端な制限を独断で進めるのではなく、まずは「自分の身体がどう反応しているか」を観察することが大切です。必要であれば専門の医師や栄養士などの専門家に相談し、自分に最適な食事法を見つけていきましょう。
最終的には、食生活は一生涯にわたる習慣です。高GI・低GIという単純な区分に縛られすぎず、ケトン体の活用やファスティングなども含め、様々な要素をバランスよく取り入れながら、自分が最も快適に過ごせる「血糖値コントロール」と「メンタルの安定」を両立させるアプローチを探ってみてください。
免責事項 : 本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的・専門的なアドバイスの代替を意図するものではありません。具体的な疑問や不安がある方は専門家の判断を仰いでください。
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