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はじめに:人は「意味」を求める存在である
「なぜこんなことが起きたのだろう」「この経験にどんな意味があるのか」
こうした問いは、人生の転機や困難な状況に直面したとき、誰しもが一度は抱くものです。
単なる事実や出来事だけでなく、それを「どう捉えるか」「どんな意味を見出すか」によって、私たちの感情・行動・人生観は大きく変わります。
この「意味をつくる(意味づけ)」というプロセスに焦点を当てたのが、意味づけ理論(meaning-making theory)です。
とりわけ、悲しみやトラウマ、病気、失敗などのネガティブな経験を乗り越える過程において、この「意味づけ」が人のレジリエンス(回復力)を高める鍵となることが、多くの研究で明らかになっています。
本記事では、意味づけ理論の基礎から、実生活・コーチング・カウンセリングへの応用、そしてその心理学的な背景まで、事例とともにわかりやすく解説します。
1:意味づけ理論の概要
1.1 意味づけとは何か?
意味づけ(meaning-making)とは、出来事や経験に「自分なりの意味」や「価値」を見出す心理的プロセスです。
特に、苦しい体験や予想外の出来事に対して、それを単なる「災難」や「失敗」として終わらせず、個人の価値観や人生の文脈に結びつけて意味を再構成することが重要です。
1.2 意味づけ理論の起源と代表者
意味づけ理論は、トラウマ心理学や実存心理学、ポジティブ心理学など複数の分野と関連しています。
代表的な研究者には以下の人物が挙げられます:
- ヴィクトール・フランクル:「夜と霧」で知られる精神科医。アウシュビッツ収容所での体験をもとに、「生きる意味」が苦しみを乗り越える力になると説いた。
- クリスタル・パーク(Crystal Park):現代的な意味づけモデルを構築し、ストレス研究と実証的な研究を通じて意味づけの役割を示した。
- ダン・マッカダムス:ナラティブ心理学の立場から、「人は人生を意味ある物語として語る存在である」と述べた。
2:なぜ意味づけがポジティブ感情と回復力を生むのか
2.1 認知再評価と感情の変化
意味づけは、認知行動療法でも扱われる「再評価(reappraisal)」に近いものです。
たとえば「失敗=自分には能力がない」と思っていた人が、「失敗=成長の機会だった」と意味づけを変えることで、絶望から希望へと感情が変化します。このように、出来事そのものではなく、捉え方が感情を決めるというのが意味づけ理論の中核です。
2.2 「自己の一貫性」が回復されるから
人生に大きな困難が起こると、人は「自分の世界観」や「人生の物語」に亀裂が生じたように感じます。
意味づけによって、「その出来事も自分の物語の一部である」と納得できるようになると、自己の一貫性(identity coherence)が回復します。これにより、精神的安定感や前向きな感情が取り戻されるのです。
2.3 実存的価値との再接続
フランクルの「ロゴセラピー」では、「人間は苦しみに意味を見出すことで、その苦しみを超えることができる」とされます。
人生における「愛」「使命」「希望」といった実存的価値に立ち戻ることで、人は困難に耐える力を取り戻します。
2.4 ポジティブ心理学との接点:ポスト・トラウマティック・グロース(PTG)
意味づけがうまく機能すると、人は単に「元に戻る」のではなく、以前よりも成長した状態になることがあります。これをポスト・トラウマティック・グロース(PTG)と呼びます。
意味づけはこのPTGの原動力とされており、「つらい経験が自分の人生をより深めるきっかけになった」と感じられるようになると、ポジティブ感情とレジリエンスが大きく高まります。
3:実生活・カウンセリング・コーチングへの応用
3.1 実生活での意味づけ例
- 失恋 → 「本当の自分を見つめ直すきっかけになった」
- 病気 → 「健康や命の大切さを実感するきっかけになった」
- 失業 → 「自分の本当にやりたいことを考える転機になった」
こうした意味づけは、出来事に「意義」や「希望」を加え、再出発を支える心の土台となります。
3.2 カウンセリングにおける意味づけ
- 悲嘆カウンセリングでは、故人との関係に新たな意味を見出すプロセスが重要
- トラウマ治療では、被害者意識から「乗り越えた自分」への物語の転換を支援
3.3 コーチングにおける意味づけ
- クライアントの行動目標に対して、「それがなぜ重要なのか?」という価値観レベルの問いを加えることで、動機が深まり、感情的エネルギーが高まる
- 失敗経験に対して「どんな意味があったと思う?」と問いかけることで、学びと成長につなげられる
4:意味づけを促すための3つの質問
- この経験を通じて、自分について何がわかった?
→ 自己理解を深め、アイデンティティの再構築を促す - この出来事にどんな意味があったと考えたい?
→ 主体的な再解釈を支援する - この経験が、誰かの役に立つとすれば、それはどんな形?
→ 貢献意識と希望を高め、PTGにつなげる
まとめ
意味づけ理論は、「人は出来事そのものよりも、それにどんな意味を見出すかによって感情や行動が変わる」という、人間の心の柔軟性と強さを示す重要な理論です。
特に、人生の転機や苦しみを経験した時こそ、「意味づけ」の力が問われます。意味の再構築ができたとき、人は再び立ち上がり、前に進むことができます。
カウンセリング、コーチング、教育、そして日々の対話の中でも、「意味」を見出す問いかけは、心の回復と成長を支える大きな鍵となるでしょう。
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