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1. ニヒリズムとは何か?
ニヒリズム(Nihilism)とは、一言でいえば「この世界に客観的・絶対的な意味や価値は存在しない」とする立場です。
「道徳に普遍性はあるのか?」「生きる目的は何なのか?」
このような問いに対して、「そんなものは最初からない」とするのが、ニヒリズムの根底にある態度です。
この思想は、現代人が抱く「むなしさ」や「生きる意味の喪失感」の背景にも潜んでいます。
2. ニヒリズムの語源と哲学的背景
「ニヒリズム」という言葉は、ラテン語の nihil(ニヒル=無・無価値)に由来します。
18世紀ロシアの文学思想運動に端を発し、ドストエフスキーやトゥルゲーネフの作品に見られる「信じるものを失った若者たち」の姿にその兆しが描かれました。
しかしこの思想を哲学的に深く掘り下げ、歴史と人間の運命の問題として扱ったのが、ドイツの哲学者フリードリッヒ・ニーチェ(Friedrich Nietzsche)です。
3. ニヒリズムの3つの側面
ニヒリズムには、いくつかの異なる形があります。
(1)存在論的ニヒリズム
「この世界そのものに意味や目的は存在しない」
- 宇宙は無意味で偶然に満ちている
- 神も理想も、もはや私たちに拠り所を与えてはくれない
(2)道徳的ニヒリズム
「善悪や道徳的価値は人間の幻想であり、絶対的ではない」
- 善悪は社会や文化により変動する
- 道徳に普遍的基盤はないと考える
(3)実存的ニヒリズム
「人間の生そのものに意味がない」
- 自分が生きている理由がわからない
- 空虚感、孤独、不安を感じる
4. ニーチェにおけるニヒリズムの意味
ニーチェにとって、ニヒリズムとは「西洋文明が避けられずに向かう終着点」でした。
彼はこう言います。
「神は死んだ」(Gott ist tot)
これは単に宗教批判ではありません。
キリスト教的価値観が近代合理主義や科学によって無効化され、人々がもはや意味の拠り所を見失った時代の到来を象徴する言葉です。
ニヒリズムの進行ステップ(ニーチェの視点)
段階 | 内容 |
---|---|
① 受動的ニヒリズム | 意味の喪失に絶望し、無力感に陥る |
② 積極的ニヒリズム | 古い価値を破壊し、自ら価値を創造しようとする力が芽生える |
5. ニヒリズムを乗り越える「超人思想」
ニーチェは、ニヒリズムの時代を生き抜くために、超人(Übermensch)という未来的な人間像を描きました。
超人とは、「古い価値にとらわれず、自分自身の内側から意味と価値を創り出す人間」です。
超人の特徴:
- 既成の道徳や常識を無批判に信じない
- 喜びも苦しみも含めた人生を「それでよい」と肯定する
- 「永劫回帰」の問い──「この人生が何度も繰り返されるとしたら、それでも引き受けるか?」──に Yes と答えられる力を持つ
この超人像は、従来の「善い人」や「正しさ」に従う生き方から離れ、自ら選び、創り、生きる力を持つ存在を肯定するものでした。
6. 現代におけるニヒリズムの諸相
現代社会では、宗教や伝統的な道徳が弱まり、個人の自由が拡大する一方で、多くの人がニヒリズムに直面しています。
よく見られる現代的ニヒリズム
- SNSでの承認欲求が満たされても虚しい
- 「働く意味」が見出せない
- 生きがいの代わりに消費と快楽で自分をごまかす
こうした背景には、「意味」や「価値」が相対化され、絶対的な軸が失われた社会構造があります。
7. ニヒリズムをどう生きるか?
ニヒリズムは悲観的で破壊的に思えるかもしれませんが、ニーチェはこれを「創造の契機」として捉えました。
ニヒリズムとの向き合い方
向き合い方 | 内容 |
---|---|
① 逃避せず、虚無と対峙する | 意味がないことを嘆くのではなく、そこに留まって見つめる |
② 新しい価値を創造する | 他人に与えられた意味ではなく、自分で意味をつくる |
③ 生を全肯定する | 苦しみも喜びも含めて「Yes」と言える人生を目指す |
具体的な実践として:
- 哲学や文学を通じた内面の探求
- 自分なりの美学や行動原理を持つ
- 他者との共感・対話を通じて関係性の中に意味を見出す
- 環境や身体とのつながりを再構築する(スローライフ、ローカル文化)
8. おわりに:虚無の彼方に創造がある
ニヒリズムは「すべてが無意味」と結論づけるだけの終わりの思想ではありません。
それはむしろ、「終わりなき問いを引き受けるという始まりの哲学」です。
「意味が与えられないなら、自分で意味を作る」
この姿勢こそが、現代における新しい精神のあり方です。
そして、それはフリードリッヒ・ニーチェが予見したように、
「神なき時代を生き抜く知恵」として、私たちの中に今も問い続けているのです。
※本記事では「受動的/積極的ニヒリズム」や「三つの側面」という呼び方を使っていますが、学術的には用語が揺らぐ部分があります。あくまで読者の理解を助ける枠組みとしてご紹介しています。
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