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はじめに
「ストレングスファインダー(CliftonStrengths)」の 34 資質の中で指令性(Command)は、“場のエネルギーを掌握し、物事を前に進めるために必要な決断と号令を下す〈フロントラン・リーダー〉” と評される影響力系資質です。意見が割れ、混乱や停滞が漂うシーンでも、核心を突く一言と揺るぎない態度で方向性を示し、周囲に「行こう!」と腹を括らせる力は、組織の意思決定速度と危機管理能力を大幅に高めます。本稿では 〈特徴〉〈どう活かすか〉〈注意点〉〈この資質を持つ人とどう付き合うか〉〈よく比較される資質との違い〉 の5つの観点から、指令性を徹底解説します。
1. 指令性の特徴
視点 | 内容 |
---|---|
コア衝動 | “率直に主張し、必要なら対立も恐れず意思決定をリードしたい” |
行動プロセス | 状況を俯瞰し、核心論点を瞬時に言語化。自信を持って立場を表明し、議論を収束へ導く。決断に明快にコミットし、反対意見とも正面から向き合う、 |
強みの現れ方 | 会議でモヤモヤが続くと「結論は〇〇だ」と明示し先へ進める。危機時に「私が責任を取る」と宣言し、皆を安心させる。ネガティブ情報を隠さず伝え、現実直視を促す。 |
価値提供 | 意思決定の停滞や不安を払拭し、行動に伴う責任を引き受けることで組織の推進力を底上げ。 |
キーワード | 率直さ/決断力/主導権/対立耐性/責任引受 |
2. 指令性を最大限に活かす方法
- “決断のタイムボックス”を宣言する
例:議論40 分+決定 5 分など時間枠を先に区切り、迷走を防止。 - ネガティブ情報を“光の下”へ引き出す
潜在的リスク・不満をあえて口に出し「だからこそ今動く」と踏み込むことで覚悟を共有。 - “責任マトリクス”を即時可視化
誰が最終責任者かをRACI※等で明確にし、決断後の実行がぼやけないようにする。 - 良質な反対意見を歓迎する
「私への異論を歓迎する。ただし具体案もセットで」を合言葉にし、対立を建設的エネルギーへ変換。 - “勝ちパターン再現術”をドキュメント化
危機対応や意思決定フローをマニュアルに落とし、チームが次回から迅速に模倣できるようにする。
※RACIは「誰がやるの?誰が決めるの?誰に聞くの?誰に知らせるの?」を明確にする責任分担のフレームワークです。
RACIの意味(4つの役割)
英語 | 意味 | 説明 |
---|---|---|
R = Responsible | 実行責任者 | 実際にタスクを遂行する人。手を動かす主体。 |
A = Accountable | 最終責任者 | 結果に対して責任を持つ人。承認・決断を行う。基本的に1つのタスクにつき1人。 |
C = Consulted | 協議先 | 意見を求められる専門家や関係者。事前に相談される立場。 |
I = Informed | 通知先 | 進捗や結果を共有されるが、意思決定には関与しない人。 |
3. 指令性に潜む落とし穴と注意点
落とし穴 | 具体例 | 対策 |
---|---|---|
威圧・強権的に映る | 声が大きく反論を遮断 | “1 人2分意見タイム”を設け公平に発言機会を確保 |
協調性の低下 | 他者の感情を置き去りにする | 決断後に「感情面のケアMTG」を入れ、不安や不満を傾聴 |
情報収集不足の早急決断 | データが揃う前に結論 | 分析思考・慎重さを持つメンバーに“Go/No-Goチェック”を委ねる |
過度な責任集中 | すべて自分で背負いバーンアウト | 責任共有型のOKRを設定し、達成プロセスをチームで分担 |
4. 指令性を持つ人との付き合い方・コーチングヒント
- “決断フェーズ”でバトンを渡す
分析・ブレスト段階は他メンバー、クロージング段階で指令性にバトンを渡すとシナジーが高い。 - 率直さを期待する旨を先に示す
「遠慮なくズバッと言ってほしい」と伝えると才能が発火し、忖度のない議論が得られる。 - 感情的影響をフィードバックする
「今の言い方でAさんが萎縮していた」など行動→影響を具体的に伝え、調整を促す。 - “代案付き批判”をお願いする
否定だけでなく「こうすれば良くなる」をセットで発言してもらうと、対立が生産性へ転換。 - 権限と責任を一致させる
決断権がある案件を任せ、結果責任を引き受けてもらうとリーダーシップが正方向に発揮される。
5. よく比較される資質との違い
5-1 指令性 vs 自己確信(Self-Assurance)
項目 | 指令性 (Command) | 自己確信 (Self-Assurance) |
---|---|---|
ベース | 外向的主導権 | 内的自信・胆力 |
表現 | 声量・存在感で場を掌握 | 静かな確信でリスクを取る |
目的 | 他者を動かす | 自身の判断を信じ行動 |
リスク | 威圧的・押し付け | 独断的・孤立 |
コンビ活用 | 自己確信が決断の軸を固め→指令性が対外的に宣言・推進 |
5-2 指令性 vs 活発性(Activator)
項目 | 指令性 | 活発性 (Activator) |
---|---|---|
主眼 | 意思決定の明示 | 行動の即時着手 |
スピード | 結論を出す速さ | 実際に動く速さ |
リスク | 強権的 | 計画不足 |
補完関係 | 指令性が決断→活発性がすぐ動き実験→結果を指令性が再判断 |
6. まとめ
指令性は “場を切り開く号令力” によって、組織の曖昧さを排除し、スピーディな意思決定と責任ある行動を実現する資質です。
- 特徴:率直な主張、対立耐性、高速決断、責任引受
- 活かし方:タイムボックス決断、ネガ情報可視化、責任マトリクス、反対歓迎、勝ちパターン共有
- 注意点:威圧リスク、協調性低下、情報不足決断、責任過集中に注意
- 付き合い方:決断フェーズ任命、率直期待表明、影響フィードバック、代案付き批判、権限責任一致
- 比較:自己確信とは “外的主導と内的確信”、活発性とは “結論提示と即時行動” の対比
指令性が適切に活きれば、チームは “結論先送り症候群”から脱却し、覚悟ある意思決定と迅速行動で市場の不確実性に打ち勝てます。あなた自身やメンバーにこの資質があるなら、本稿を手引きに “号令のチカラ” を組織の突破力へと昇華させてください。
補足ポイント
1. 資質の成熟度(Maturity)に応じた変化
- 未成熟な指令性は「支配的」「圧が強い」と受け取られやすく、対立を恐れずに主張する姿勢が誤解を招くことがある。
- 成熟すると、不安や混乱の中でも明確な判断と率直な対話を導く“安心のリーダー”として機能する。
- 例:以前は「強すぎる言い方で距離を置かれていた」が、成熟後は「本音を引き出してくれる信頼できる人」と評価されるように。
2. 「聴く力」とのバランス
- 指令性が強い人は、沈黙や回りくどさよりも率直で明快なコミュニケーションを好む。
- ただし、相手の思考や感情が整理される前に結論を迫ってしまうと、威圧的に映るリスクも。
- 「まずは全部聞かせてください」「今は聴く側に徹します」という姿勢が、安心と信頼を生む。
3. 他の資質とのコンビネーション例
- 最上志向(Maximizer)×指令性
→ 卓越を求める強い意志で周囲を牽引する“高基準の旗振り役”。変革期に力を発揮する。 - 責任感(Responsibility)×指令性
→ 一貫性のある言動と責任ある判断で、信頼される決断者として組織をまとめる。 - 戦略性(Strategic)×指令性
→ 複数の選択肢から最短ルートを即座に見極め、決断力でチームを動かす“戦術的リーダー”になる。
4. バルコニーとベースメントの対比
バルコニー(高成熟度):
- 困難な場面でも冷静に判断し、本音で向き合う対話を促進する。
- 他者の迷いや不安を言語化させ、問題の核心に切り込む“対立の突破口”をつくる。
ベースメント(低成熟度):
- 強引な決めつけや一方的な主張となり、周囲の萎縮や反発を招く。
- 対話の余白を与えないことで、「話しにくい人」「独断的な人」と見られがち。
5. デジタル時代における活かし方
- 曖昧な議論や優柔不断な決定が生じやすいオンライン環境(ビデオ会議など)で、明快な方針提示がチームを引き締める。
- Slackなどでの明確な合意形成・役割分担の言語化に強みを持ち、プロジェクトを推進。
- “対話より行動”が優先されやすい時代においても、「本当に大事な対話」を促す存在になれる。
7. 指令性の特徴はこちらの動画から!
参考文献
- Gallup. “The Strategic Theme: How You Can Productively Aim Your CliftonStrengths Talent.” Gallup.com.
- Gallup. “Strategic Thinking Domain of CliftonStrengths.” Gallup.com.
- Rath, T. さあ、才能に目覚めよう srengthsFinder 2.0. 日本経済新聞出版, 2017.
- Gallup. ストレングスリーダーシップ. 日本経済新聞出版社, 2013.
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