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はじめに
「ストレングスファインダー(CliftonStrengths)」34資質の中で 包含(Includer) は、“輪の外にいる人を見逃さず、全員が居場所を感じられる場をつくる〈ウエルカム・ビルダー〉” と評される人間関係構築系資質です。グループに潜む“見えない境界線”を察知し、境界をゆるめる言動でメンバー全員の声を引き出します。本稿では 〈特徴〉〈どう活かすか〉〈注意点〉〈この資質を持つ人とどう付き合うか〉〈よく比較される資質との違い〉 の5つの観点から、包含を徹底解説します。
1. 包含の特徴
視点 | 内容 |
---|---|
コア衝動 | “誰一人取り残さず、共に前進したい” |
行動プロセス | 疎外感を抱く人を敏感に察知、言葉や態度で「あなたも歓迎」とシグナルを発する議論では発言が少ない人へパスを回す。 |
強みの現れ方 | オンボーディングで新人の緊張を和らげる会議で多様な意見を引き出し、盲点を削減。多国籍・多世代チームで心理的安全性を醸成。 |
価値提供 | 組織に“声が届く文化”を根付かせ、エンゲージメントと創造性を底上げ。 |
キーワード | 包摂/ウェルカム精神/発言機会の平等/多様性推進/心理的安全性 |
2. 包含を最大限に活かす方法
- “ラウンドロビン式発言”を採用
会議で全員が順に 1 分発言するルールを導入し、沈黙メンバーの声を可視化。 - オンボーディング・バディ制度を主導
新人や異動者に経験豊富なメンバーをマッチングし、早期帰属意識を形成。 - インクルーシブ言語ガイドを策定
無意識バイアスを排した表現リストを共有し、言葉選びから安全な場を構築。 - 多様性指標をKPI化
会議発言率、施策提案数、イベント参加率を属性別にトラッキングし、改善サイクルを回す。 - 社内“オープン・ドア”イベントを定例化
部門長がカジュアルQ&Aを開き、階層・部署の壁を低減。包含資質が雰囲気づくりをリードする。
3. 包含に潜む落とし穴と注意点
落とし穴 | 具体例 | 対策 |
---|---|---|
合意形成の長期化 | 全員の意見を聞き過ぎ判断が遅延 | “相談フェーズは○日、決定は×日”と締切を設定 |
境界ゼロで情報過多 | Slackチャンネル等が誰でも閲覧可になり混乱 | 機密・権限区分を明確にし“必要十分”な開放度に調整 |
パフォーマンス格差への遠慮 | 成果が低いメンバーへ厳しい指摘を回避 | 行動フィードバックを事実ベースで伝え、支援策をセット提示 |
自己犠牲による過負荷 | 相談窓口が集中し疲弊 | “相談受付時間”やバディ共有で負荷分散 |
4. 包含を持つ人との付き合い方・コーチングヒント
- イベントや会議の“ホスト役”を任命
アイスブレイクや参加者紹介をリードしてもらい、早期に場を暖める。 - 沈黙メンバーへのサポートを可視化
バックアップ資料や発言フォロー方法を共有し、裏方努力をチーム功績として認知。 - 判断フェーズでは“優先度”を示す
「意見は歓迎、ただし本日中に方向を決める」など枠を明示し迷走を防止。 - メンタルヘルス休暇を推奨
他者ケアで疲弊しやすい。年数回の完全オフ日を奨励し、長期的活躍をサポート。 - 多様性施策の効果をデータで報告
「離職率 −10pt」「女性管理職比率+5pt」など成果を数値化し、包含の影響を社内共有。
5. よく比較される資質との違い
5-1 包含 vs 共感性(Empathy)
項目 | 包含 (Includer) | 共感性 (Empathy) |
---|---|---|
焦点 | 機会と場の平等 | 感情の理解 |
行動 | 発言機会を与える | 気持ちに寄り添う |
リスク | 決定の遅れ | 情緒巻き込まれ |
コンビ活用 | 共感性が感情を察知 → 包含が機会を設計し全員を巻き込む |
5-2 包含 vs 公平性(Consistency)
項目 | 包含 | 公平性 (Consistency) |
---|---|---|
視点 | 人ごとの“輪の外”をなくす | ルールの一貫性 |
手法 | 招き入れる・カジュアル | 標準プロセスを制定 |
リスク | ルール甘さ | 融通の欠如 |
補完関係 | 公平性が共通ルールを整え、包含がルール外の人をフォローアップ |
6. まとめ
包含は “輪の外にいる人をゼロにする包摂エンジン” として、組織へ高い心理的安全性と多様性駆動型イノベーション をもたらす資質です。
- 特徴:疎外感を察知→歓迎シグナル→全員参加型の場を構築
- 活かし方:ラウンドロビン発言、バディ制度、インクルーシブ言語、D&I(※) KPI、オープンドアイベント
- 注意点:合意遅延、情報過多、遠慮による甘さ、自己過負荷に注意
- 付き合い方:ホスト任命、サポート可視化、締切明示、休暇推奨、効果をデータで共有
- 比較:共感性とは “機会と感情”、公平性とは “包摂とルール” の対比
包含が健全に活きれば、チームは “声なき声の欠落” から脱却し、全員のアイデアと才能が響き合う協働文化を獲得できます。あなたやメンバーにこの資質があるなら、本稿を参考に “ウエルカム・ビルダー” として組織のポテンシャルをフルに引き出してください。
※Diversity & Inclusion Key Performance Indicators(多様性と包括性に関する重要業績評価指標)の略
補足ポイント
1. 資質の成熟度(Maturity)に応じた変化
- 未成熟な包含は、誰にでも合わせようとして優柔不断・八方美人と見られることがある。
- 成熟すると、「誰も排除しない」信念のもと、多様性を尊重した安心安全な場づくりを担う存在となる。
- 例:かつては「断れずに疲弊する」ことも多かったが、成熟後は「誰を巻き込み、どう調和させるか」を戦略的に考えられるようになった。
2. 「聴く力」とのバランス
- 包含が強い人は、見えにくい“疎外感”に敏感で、声が小さい人にも耳を傾けようとする。
- ただし、意見をくみ取るあまり、自分の主張が曖昧になったり、全体の方向性がぼやけることも。
- 「まず皆の声を聴いた上で、方針を整理して提案します」といった思考と共感の切り分けが重要。
3. 他の資質とのコンビネーション例
- 共感性(Empathy)×包含
→ 感情と立場の両面から人を受け入れ、“場の安心感を生む包容者”。心理的安全性を支える軸となる。 - 調和性(Harmony)×包含
→ 意見の違いに折り合いをつけ、みんなが参加できる妥協点を見つける交渉者型。 - 最上志向(Maximizer)×包含
→ 包括的に人を巻き込みつつ、個々の強みに焦点を当てて活かす“多様性活用型リーダー”。
4. バルコニーとベースメントの対比
バルコニー(高成熟度):
- 多様な人々を自然に受け入れ、分断を防ぎ、協働を生み出す“チームの調整役”となる。
- 一人ひとりに居場所をつくることで、組織文化を健全に保つ推進者となる。
ベースメント(低成熟度):
- 全員を受け入れようとしすぎて、優先順位が不明瞭になり、意思決定が遅れる。
- 不健全な関係性や不適切な行動に対しても線引きができず、「誰でもOK」になってしまうリスクがある。
5. デジタル時代における活かし方
- リモートワークやチャット文化で孤立しがちなメンバーに対し、積極的に声をかける“つなぎ役”になれる。
- Slackの公開チャンネル運用や、ミュート気味な人の発言を拾う配慮型ファシリテーターとして活躍。
- 多様な働き方・価値観の中で、誰も取り残さないプロジェクト設計ができる包摂力が求められる。
7. 包含の特徴はこちらの動画から!
参考文献
- Gallup. “The Strategic Theme: How You Can Productively Aim Your CliftonStrengths Talent.” Gallup.com.
- Gallup. “Strategic Thinking Domain of CliftonStrengths.” Gallup.com.
- Rath, T. さあ、才能に目覚めよう srengthsFinder 2.0. 日本経済新聞出版, 2017.
- Gallup. ストレングスリーダーシップ. 日本経済新聞出版社, 2013.
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