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1. はじめに:発達心理学の2大理論とは?
「人はどのように成長し、どのように変化していくのか?」
この問いに答えるために、発達心理学という学問が存在します。その中でも、とりわけ影響力の大きい理論を打ち立てたのが、エリク・エリクソンとジャン・ピアジェです。
二人とも発達の「段階」を重視しましたが、その焦点や目的はまったく異なるものでした。この記事では、両者の理論を体系的に比較し、教育や心理支援の現場でどのように活用できるかを考察します。
2. エリクソンの発達理論とは?
2-1. フロイトの精神分析からの拡張
エリク・エリクソン(Erik H. Erikson)は、精神分析を土台としながらも、社会との関係性を重視した発達理論を打ち立てました。彼の理論は「心理社会的発達理論」と呼ばれます。
フロイトが性的エネルギー(リビドー)に着目したのに対し、エリクソンは「個人の内面と社会の相互作用」に注目しました。
2-2. 発達の8段階と心理社会的危機
エリクソンは、人の発達を生涯にわたる8つの段階で捉え、それぞれに「心理社会的危機(crisis)」があると考えました。
発達段階 | 年齢 | 発達課題(危機) |
---|---|---|
1. 乳児期 | 0〜1歳 | 信頼 vs 不信 |
2. 幼児前期 | 1〜3歳 | 自律性 vs 恥・疑念 |
3. 幼児後期 | 3〜6歳 | 積極性 vs 罪悪感 |
4. 学童期 | 6〜12歳 | 勤勉性 vs 劣等感 |
5. 青年期 | 12〜20歳 | アイデンティティ vs 拡散 |
6. 初期成人期 | 20〜30歳 | 親密性 vs 孤立 |
7. 中年期 | 30〜65歳 | 生殖性 vs 停滞 |
8. 老年期 | 65歳〜 | 統合 vs 絶望 |
例えば、青年期の課題は「自分とは何者か」という問い(アイデンティティ)に答えることです。ここでの達成が、その後の人生の安定性に大きく関わります。
2-3. 心理社会的発達理論をより詳しく学びたい方はこちら!
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3. ピアジェの発達理論とは?
3-1. 認知構成主義の立場
ジャン・ピアジェ(Jean Piaget)は、スイスの心理学者で、子どもが自らの力で世界を理解する過程(=認知発達)を追究しました。彼の理論は「認知発達理論」と呼ばれます。
ピアジェは、「子どもは大人のミニチュアではなく、独自の思考世界を持っている」と考えました。
3-2. 4つの発達段階と認知構造の変化
ピアジェは子どもの思考能力がどのように変化するかを、以下の4段階に分けました。
発達段階 | 年齢 | 特徴 |
---|---|---|
1. 感覚運動期 | 0〜2歳 | 五感と運動で世界を理解、対象の永続性を獲得 |
2. 前操作期 | 2〜7歳 | 言語の発達、自己中心的思考、論理的操作は困難 |
3. 具体的操作期 | 7〜11歳 | 論理的思考が可能に、保存の概念の獲得 |
4. 形式的操作期 | 11歳以降 | 抽象的思考、仮説の操作、メタ認知の芽生え |
特に重要なのが、「保存の概念」の理解。これは、たとえ形が変わっても量は同じであるという認識で、論理的思考の出発点とされます。
3-3. 認知発達理論をより詳しく学びたい方はこちら!
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ピアジェの認知発達理論とは?子どもの思考の成長を4段階で理解する
この記事は約5分4秒で読むことができます。 目次 / Contents はじめに:子どもの「考える力」はどう育つのか?ピアジェの基本的な考え方:子どもは「小さな科学者」認知発達の4つの段階第1段階:感 …
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4. 両者の違いをわかりやすく比較する
両者はともに発達段階を重視しましたが、その目的・対象・方法において根本的に異なります。以下の比較表にまとめます。
観点 | エリクソン | ピアジェ |
---|---|---|
理論の焦点 | 心理社会的課題(感情・人間関係) | 認知的課題(思考の構造) |
発達段階 | 8段階、生涯にわたる | 4段階、子ども中心 |
理論のルーツ | フロイトの精神分析 | 認知構成主義、科学的観察 |
発達の要因 | 社会との関係性 | 知識構築と環境との相互作用 |
キーワード | アイデンティティ、危機、信頼 | スキーマ、同化、調節、保存 |
実用面での活用 | カウンセリング、心理支援、ライフコーチング | 教育、知能テスト、学習支援 |
5. 教育や心理支援への活用
5-1. 教育におけるピアジェの貢献
ピアジェ理論は、教育分野において多大な影響を与えています。
- 子どもの思考は段階的に発達するという前提に立ち、年齢に応じた教育内容の設計が行われるようになりました。
- 「探究学習」や「アクティブラーニング」など、子どもが自ら知識を構築する学習法も、彼の影響を受けています。
5-2. 心理支援におけるエリクソンの貢献
一方、エリクソンの理論は、自己理解や人生の課題に向き合う支援に大きな示唆を与えます。
- 青年期の「アイデンティティの確立」は、思春期の不安や葛藤への理解に役立ちます。
- 成人期・老年期における「生殖性」「統合」などの課題は、ライフコーチングやキャリア支援の現場で活用されています。
- 認知症ケアや終末期医療においても、老年期の課題である「人生の統合」が重要視されます。
6. 結論:どちらが優れているのかではなく、どう使うか
エリクソンとピアジェの発達理論は、それぞれ異なる視点から人間の成長を捉えているため、優劣をつけるものではありません。
- 教育現場では、ピアジェの理論が子どもの「思考の限界」を理解し、適切な教材・課題を提供するうえで重要です。
- 心理的成長や社会的適応に関わる支援では、エリクソンの理論が「今どの課題を生きているか」を見極める助けになります。
現代の実践的な場面では、両者を補完的に理解し活用することが、最も有効です。
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