コーチング 心理学

共同体感覚とは何か?アドラーが説いた“幸福”の条件

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共同体感覚

はじめに|「幸福とは、自分のことだけを考えないこと」

「人はなぜ苦しむのか?」「どうすれば幸せになれるのか?」

この問いに対して、オーストリアの精神科医アルフレッド・アドラーは精神的健康や人生の充実は「共同体感覚(Gemeinschaftsgefühl)」の発達にかかっていると考えました。そのため、彼の理論では共同体感覚こそが、人が幸福に生きるための土台であると位置づけられています。

一見すると「他人のことを考えなさい」という道徳のようにも思えるこの言葉。
しかしアドラーが語る「共同体感覚(Gemeinschaftsgefühl)」とは、単なる利他主義でも、優しさでもありません。

それは、人間が本来持つべき“つながりの感覚”であり、精神的な健康と人生の充足に欠かせない心の姿勢です。

この記事では、「共同体感覚」とは何か、その理論的背景や日常への応用、そして幸福との関係まで、体系的に解説します。


共同体感覚とは何か?:定義と構成要素

定義:Gemeinschaftsgefühl(ゲマインシャフトスゲフュール)

共同体感覚は、アドラーが用いたドイツ語「Gemeinschaftsgefühl」の訳語です。直訳すると「共同体への感覚」「共同体とのつながりを感じる心」となります。

アドラーは人は他者とつながっているという感覚と、他者に貢献するという意志こそが、人間として最も成熟した心理状態であると考えたのです。

つまり、共同体感覚とは以下の3つの側面から成り立っていると言えます。

1. 所属感

「私はここにいていい」「この社会に居場所がある」という感覚。
他者からの承認だけでなく、自らが社会の一部だと感じること。

2. 貢献感

「誰かの役に立っている」という実感。
自分の存在が他者の幸福や社会にポジティブな影響を与えているという確信。

3. 共感

他者の立場や感情に共感し、相互理解に基づいて関わろうとする姿勢。


なぜ共同体感覚が大切なのか?

人間は本来、社会的存在である

アドラーは、フロイトが人間を“性的欲求”をベースにした個人主義的存在と捉えたのに対し、人間とは本質的に「社会的存在」であり、他者とのつながりの中で成長すると主張しました。

そのため、共同体感覚は「精神的健康」の指標でもあります。

  • 社会から孤立しているとき、人は不安・怒り・抑うつを感じる
  • 逆に、他者とつながっていると感じるとき、自己肯定感が高まり、前向きな行動がとれる

この感覚が薄れると、人は劣等感・攻撃性・自己中心的行動に陥りやすくなります。


共同体感覚と“幸福”の関係

幸福とは、「つながりと貢献」によって生まれる

アドラーが唱えたように、人は誰かの役に立っているという実感なしに、本当の意味で幸福にはなれません。

現代心理学でも、幸福に必要な要素として「他者との良好な関係性」が挙げられています(例:ポジティブ心理学のPERMAモデルの“R = Relationships”)。

たとえば…

  • 子どもに手を差し伸べたとき
  • 職場で同僚に感謝されたとき
  • 自分の発言や行動が誰かの成長につながったと感じたとき

こうした場面で感じる喜びこそ、まさに共同体感覚に根差した幸福です。


共同体感覚が失われた現代社会

SNS・競争社会の中で

現代は一見、かつてより人と“つながりやすく”なっているように見えます。しかし実際には、

  • 比較と承認欲求に振り回されるSNS文化
  • 個人主義や成果主義の加速
  • 地域社会や家族のつながりの希薄化

といった要因によって、共同体感覚が育ちにくい環境になっているとも言えます。

結果として、以下のような問題が表面化しています。

  • 自己肯定感の低さ
  • 孤独感の増大
  • 他者への攻撃や過剰な自己主張

アドラーが100年前に提唱した「共同体感覚の欠如による心の問題」は、むしろ現代の方が深刻になっているかもしれません。


どうすれば共同体感覚を育めるか?

自分から「与える」ことが第一歩

アドラーは、共同体感覚の育成は他者の行動を待つのではなく、自らが主体的に他者や社会と関わり、貢献していく中で育まれると考えました。以下のような小さな行動から始められます。

日常でできる3つの実践

  1. ありがとうを言う:感謝の言葉は、自他に「つながりの実感」をもたらします
  2. 誰かの役に立とうとする:小さな親切や配慮の積み重ねが貢献感につながります
  3. 判断を控え、共感する:相手の話を評価せず、まず「聴く」ことを心がけましょう

共同体感覚を育むための「勇気」

アドラー心理学において、「共同体感覚」を育むためには「勇気(Courage)」が欠かせないとされています。ここでいう勇気とは、単に大胆さや強さを示すものではなく、「困難を乗り越えてでも、他者とつながり、貢献しようとする心の姿勢」です。

たとえば、他人に心を開くことは傷つくリスクも伴います。また、自分の力が誰かの役に立つか分からない状況で、一歩踏み出すのは容易ではありません。そうした不安や恐れに直面しながらも、「それでも自分は他者と関わっていこう」と決断する――この姿勢こそが、アドラーの言う「勇気」です。

アドラーは、「人が問題を抱えるとき、それは勇気をくじかれているときである」と述べています。つまり、勇気が回復すれば、再び共同体感覚を持って生きる力も湧いてくるのです。共同体感覚は単なる道徳心ではなく、「勇気に支えられた実践」だと言えるでしょう。

自己受容と共同体感覚の深い関係

アドラー心理学における共同体感覚とは、単に「他人のために尽くすこと」ではありません。そこにはまず、自分自身との健全な関係性が前提として求められます。つまり、「ありのままの自分を受け入れること」――これが、他者とのつながりや貢献の土台となるのです。

アドラーは「人は劣等感を持ちながら、それを克服しようとする存在である」と述べました。このとき重要なのは、劣等感そのものを否定することではなく、「劣等感を抱えている自分にも価値がある」という前提に立つことです。自分の弱さや未熟さを抱えたままでも、他者とつながり、貢献することは可能なのだという認識が、共同体感覚の入り口になるといえます。

もし自分を否定し、「こんな自分では役に立てない」「誰かとつながる資格がない」と感じてしまえば、他者との関係にも歪みが生まれます。逆に、自分をそのままの姿で受け入れることができれば、他者にも寛容になり、共感や貢献の姿勢が自然と育まれていくのです。

この自己を受容する力が、勇気づけや共同体感覚の重要な基盤と捉えることができます。他者とのつながりを築くには、まずは自分を信頼すること。その土壌が整ってはじめて、真に健全な社会的つながりが育まれていくのです。


コーチングや教育での応用

共同体感覚は、コーチングや教育の現場でも非常に重要です。

  • 生徒が「ここにいていい」と感じられる教室環境
  • クライアントが「話しても大丈夫」と思える関係性
  • 組織内で「互いに貢献し合う」チーム文化

こうした場づくりには、指導者やコーチ自身がまず共同体感覚を体現する必要があります。

アドラー心理学に基づく教育法「勇気づけ」も、まさにこの共同体感覚の育成を目的としています。


おわりに|つながりの感覚を取り戻すために

「孤立」は、現代における最大のストレス要因の一つです。
そして、それを癒す最も確実な方法が、アドラーが100年前に提唱した共同体感覚の回復にあります。

つながり、貢献、共感――
これらは時代を超えて、人が人として生きるために不可欠な心の栄養です。

あなた自身が、他者との関係に「つながりの感覚」を見出すとき、
人生の見え方は大きく変わっていくでしょう。


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